(コラム)88年後半から現在までのKISSの変遷と、その音楽的地位について考察する

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KISSを初めて知ったのは88年のことである。

友人に勧められて聴いたが結構ぐんとくるものを感じた。

当時の私は、BON JOVIにぞっこんになっていたが、それでもこのバンドよりは年輩な人間であることはすぐにわかったし、音楽的にも年代が違うから、内容も違うのは勘でわかったが、聴いてみると、抵抗なく聴けた。

あのベスト盤であるSMASHES,THRASHES & HITSを初めて聞いたときにである。

当時のBON JOVIにぞっこんになっていた自分でさえも虜にするくらいのコンテンポラリーさを内包していたのだ。

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ヘヴィさもちょうどいいし、歌も表現力が高いし、オクターブも広い。 そして何よりもテクがどのプレイヤーも高いのだ。

いろんな音楽雑誌を読んでいくうちに、このバンドが70年代にデビューしたことは知ることができた。

しかし、この年代のアーティストを色々聴いてみると、速弾きしないのが当たり前であった。

しかしKISSはそれをして当然のように難なくこなしている。

こういった柔軟さが、あの時代を生きてこれた理由の1つなのだろう。

当時は、HR全盛期であり、いろんなバンドが、多くヒットを飛ばしていた。

KISSも例外ではなかった。

当時の最新アルバムであったCRAZY NIGHTSプラチナを獲得していた。

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CRAZY NIGHTS


それのみか、その前も、またその前もプラチナを獲得していたのだ。 それらのアルバムはいずれも佳作だった。

このような事態だったから、このバンドにぞっこんになるのも当然であった。

当時は、カセットテープを携帯可能なプレイヤーで再生し、イヤホンを耳につけて聴くウォークマンなるものがあって、それで野外でも聴くことが出きて、それでいつも聴いていたのだ。

それでいつも鳥肌を立てて聴いていたのだ、楽曲の出来が良かったが故にである。

KISSを知った時には、来日公演は過ぎてしまったので、いけなかったが、次に来たら必ず行くぞと決めた。

しかし、次の89年のアルバムであるHOT IN THE SHADEの時には、来日公演が実現せず、次のREVENGEの時も同様になってしまった。 そしてあの暗い時代が到来したのだ。

グランジ.オルタナである。 なぜか、明るい未来が開ける時代においては、どのアーティストもいいアルバムを量産するが、暗い時代になるとどのアーティストもできなくなるのだ。

不思議といえば不思議である。 やはりKISSも例外ではなかったのだ。

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そして自分がHRにのめりこむきっかけになったBON JOVIですらもいいアルバムを作れなくなってしまったのだ。

80年代後半にはあんなにも多くのバンドがいいアルバムを出していたのになぜ…と私の心まで陰鬱になったのだ。

どのアルバムを聴いてもよくない…自分はHRのファンをやめてしまおうかと悩んだが、それもやめた。

そしてそんな時代にも関わらずKISSの来日公演が実現したが、陰鬱な気分になっていた私はいくと決めていたにもかかわらず、行く気が起きなかったのでやめにした。

この時代から、中堅と大御所バンドとの人気の差が拡大し始めたように記憶している。

幸運にもKISSは大御所のバンドにカテゴライズされることになったようだ。

不景気にもかかわらず、日本武道館で行うことができたのだ。

アリーナ以上を維持するのができたのは、大御所バンドだけであり、中堅以下のバンドは中級ホールではなくクラブが当然になってしまった。

OZZY OSBOURNEも、80年代から90年代全般においても日本武道館公演を維持し続けていたから大御所だろう。

しかし、RATTイングヴェイもかつて日本武道館で公演していたが、それは1日2日くらいだったので盤石ではなかったといえるのだろうか、やはりこういったHRバンドも苦戦を強いられて、中級ホールクラブなどのキャパに縮小していくことになる。

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    RATT


不景気ということのみならず、90年第中盤からはダークな時代であり、その言葉が象徴するように、やはりヘヴィメタルバンドに有利な時代であったのだ。

ダークな要素をヘヴィメタルに加味すればその特徴をさらに高尚なものに仕上げることが叶うが、ハードロック加味するとその魅力を落とすことになるのだ。

それはいろんなハードロックバンドが、その実験をして破滅させていったことでもわかるのだ。

しかし、そんな中でもBON JOVIにしろ、KISSにしろその要素を全般的に取り入れることはせずに若干取り入れることをしたが往年のような売り上げを果たすことができなかったのは確かだが、盤石な人気を維持し続けている。

それは、こういったバンドの公演での客数をみれば一目瞭然だし、自分の作りたい音楽だけをしていれば必ずヒットすることからも明らかだ。

しかし、そういう試みをして必ずヒットするかといえばそんなことはなく、1つのアルバムで500万枚以上の枚数を売ったアーティストだけである。

それ以下の100万枚の売り上げしかしていなかったアーティストが、そのヒット作とはまるで違う音楽をしたら、やはりそっぽを向かれるのだ。

「前作とは違うようにしたかった。」などといってまるで違う音楽を体現したバンドが、次に大コケということは往々にしてある。

やはりSTEELHEARTWINGERの例で明らかだ。

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   WINGER


それゆえに、自分のやりたいようにできるアーティストは限られている。

ゆえに、自分のできる範囲でヒットをするための試みをしていかなくてはならないのだ。

ハードロックアーティストで、自分のやりたいように音楽を作るだけでヒット作になるのは、BON JOVIAEROSMITH、MOTLEY CRUE、DEF LEPPARD、GUNS N' ROSESくらいのものであろうか。

そしてKISSである。

これらのバンドは、これまで全世界でアルバム、シングル合わせて1億枚以上を売ってきたのだ。 80年代後半にそこそこヒットをしてプラチナを何枚か獲得していたバンドが、こういった大御所バンドがトリを務めるフェスで順位の早い段階で登場して演奏をしている動画がYouTubeで確認することができる。

その時、観客は関心がほとんどなく、横に移動したり、しゃべったり、菓子を頬ばったりしている。

…私は信じれない気分になる。

そんなにこのバンドに関心がないか?

逆に、このフェスのトリのバンドとそんなに実力的に開きがあるか?

微妙なくらいしかないだろう?

という叫びをあげたくなるのだ。

まあいい、その良さを分かってもらうために、このような記事を書いているのだから。

トリかそれ以下という地位で判断するのではなく、音楽の実質で判断してほしいのだ。

まあ、話をKISSに戻したい。

このバンドに80年代後半にぞっこんになってしまったゆえに、初期の作品を入手することにした。

お金があまりなかったので、レンタルレコード店をやめる店での閉店セールにおいて、KISSの初期のものをいくつか入手した。

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もう何十人、いやそれ以上の人に聴かれたがゆえに、ジャケットはボロボロ。

しかもレコードプレイヤーにかけて聴くも、プチプチとしたノイズがいつまでも耳についた。

やはり当時のレコード針は、重くそして面積が広かったので、こういうことはしょっちゅうあったのだ。

中古盤屋で買ったレコードが何百回も聴かれたゆえに、盤面がつるつるに近く、プレイしても音が小さくしか聴けない、というようなものが多々あった。

しかし、技術大国ニッポンゆえに、軽く面積の小さいレコード針が開発され、何百回も聴いても音が悪くならなくなったのだ。

ゆえに現代において、そういうレコードを探すのは難しい。

他にも敬愛するバンドであるRATTの某アルバムを何百回も聴いても、全然音が悪くならないので、私はつるつるになるまで聴こうという実験に挫折してしまった(笑)

そんないわくつきのレコードを聴いて思ったのは、やはりKISSの初期と現代では、音楽が変遷している、ということである。

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その変遷にもかかわらず、KISSは自分たちの音楽をコンテンポラリーにする努力を怠らなかった。

80年代後半になっても、その姿勢を崩さなかったゆえに、人気を維持できたということが言えるのかどうか、は私は神ではないのでわかりかねる。

コンテンポラリーさの維持ということは、大事のようにも見えるが、そういったことを一切しないでいて、人気を維持し続けているアーティストもいるのだ。

ゆえに、KISSもデビュー当初からの音楽性を維持し続けていても、こんにちの地位を維持できた可能性もある。

いやそういう試みをしなかったほうが、逆にもっと上がった可能性もあるのだ。

ゆえに、どちらを選ぶかは、そのアーティスト次第ということになる。

しかし、レコード会社はボランティアではないので、売れないアーティストの面倒をいつまでも見続けるはずはなく、売れなければ契約を切られるのは当然である。

コンテンポラリーさを取り入れるか、取り入れないかは最大の眼目ではないようだ。

レコード会社としては、売れたかどうかが最大の眼目なのだ。



これを読んで、守銭奴かといわれそうであるが、やはり売れないことには会社の危急存亡の危機になってしまうので仕方がないのだ。

厳然たる事実を言っているだけだ。

大御所アーティストは、自分のやりたいように音楽を作るだけで売れるが、それ以下のちょっとぐらいの売り上げのアーティストが自分のやりたいようにしているだけでは、難しいということである。

最悪の場合は売れずに在庫の山ということも珍しくないのだ。

そうなればレコード会社も黙ってはいないのだ。

しかし、KISSはそういった制約をまぬかれている、幸運な大御所バンドになっていたようである。

80年代においても、コンテンポラリーさを取り入れてくれたがゆえに、KISSのファンでいられたし、その手法で作ってくれたアルバムは、どれもいいものばかりである。

LICK IT UP』『ANIMALIZE』『ASYLUM』『CRAZY NIGHTSはどれも私の愛聴盤だし、売ろうと思ったことは一度もない。

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こういったアルバムの音楽性を維持していってくれれば、私は熱烈なファンでいたが、それが見られず、私があまり好感を持っていない初期のアルバムは、どれも佳曲が少ないから愛聴盤になれないのだ。

96年以降、その初期のアルバムばかりをプレイするメイクのKISSを復活させてしまったがゆえに、メイクしてからはあまり関心が持てずにいる。

2019年最終ツアーでも、S席20000円という高値では…げんなりしてしまった。

どうしてこんなに高いのか。

でもKISSも私が、ハードロックにのめりこむきっかけを作ってくれたバンドゆえに感謝はしている。 また復活してきたら、行く可能性はなきにしもあらずだ。

その可能性に目を閉ざさないでいようと思う。

以下に私がぞっこんになっていたKISSベストアルバムを紹介したい。


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今回はこれにて終了します。

ありがとうございました。

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