(コラム)マーク.ボールズとDC.クーパーの意外なる共通点は何か?

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イングヴェイ.マルムスティー
の最高傑作はどのアルバムか?という問いに、TRILOGYと答える人は多いだろう。

あのアルバムは佳曲揃いだ。


TRILOGY

86年の作だが、今でもこのアルバム収録の“Liar”“You Don't Remember, I’ll Never Forget“Trilogy Suits”が演奏されている。

その楽曲群の余韻に浸ることしばしばであった。

しかしなぜか、このアルバムは手元から近いところに置ておいたはずであるが、聴く回数は他のイングヴェイのアルバムよりもかなり少なかった。

その理由は後述する。

“You Don’t Remember, I’ll Never Forget



瞠目すべきは、ここでのシンガーであるマーク.ボールズの力量だろう。

聴いて1発で上手い!と誰しも思う資質を持っているのだ。

私もその衝動にかられた1人だ。

速い曲であろうが、スローな曲だろうが、メロディを歌いこなし、ヘヴィな楽器音に打ち負けない強靭な声帯を持っているのだ。


     マーク.ボールズ


こういった声が聴きたいがゆえに、イングヴェイのバンドでの継続を期待したファンも多くいただろうが、このアルバムのツアー中に脱退してしまうのだ。

それから10年以上を経て、またイングヴェイマークは合流し、2つのアルバムを作った。

ALCHEMYWAR TO END ALL WARSである。

そこでのキャリアは、TRILOGYほど評価はされなかったようだ。

そしてさらに数年後、マークROYAL HUNTでシンガーを務めることになる。

このバンドは、イングヴェイと同じようにネオクラシカルなフレーズやメロディを擁するバンドゆえに、心躍ったファンも多くいたに違いない。

場は違うけれど、同じ細密なジャンルの音楽を有するバンドでどのような活躍をしてくれるのか、と期待しただろう。

しかし、それほどの感動を呼び起こさなかったのだ、少なくとも私はそうだ。

作曲能力がこのバンドは低下したということではないし、マークの歌唱力が減退した、ということでもない。 どのミュージシャンも上手いし、マークも上手い。


      ROYAL HUNT


アンドレが超一流のミュージシャンゆえに、やはり類は友を呼ぶである。

ギターもベースもドラムも、キーボードもすべて上手い。

そういったエリート集団に抜擢されたのだから、マークも当然のことながらうまいのだ。

しかし、一向に感動できないのだ。

聴いている瞬間は、いいと思いながらも、CDをケースにしまって、次の機会に取り出して聴こうという気になれずに、ほかのCDに手が向いてしまう。

また、別のCDをショップなりに連絡して取り寄せてしまう。

いつしか疎遠になり、そして中古盤屋に売るという運命をたどってしまったのだ。

イングヴェイでのCDしかり、ROYAL HUNTでのCDしかりである。



93年ごろから北欧メタルブームが起こり、アメリカ、イギリス、カナダ以外の非英語圏からのバンドが多くデビューし市場をにぎわせた。

しかし、そのどれもがほとんど感動できずに終わった。

私がいまでもいいと思って聴いているのは、ノルウェイDA VINCIとオランダのST AVENUEくらいのものだろうか。

何十というバンドのCDを買って、このありさまである。

この事態をみて、「日常語でない英語で歌うがために感情がこめられずにいるがゆえに、聴き手に感動を起こさせないのだろう。」と私は考えていた。

しかし実際は違った。

そういう面もあっただろう。

しかし、この時期に日本でのデビューを飾ったROYAL HUNTは、デビュー時にシンガーだったヘンリックが脱退し、次にアメリカ人DC.クーパーをシンガーに迎え入れた。


     DC.クーパー


そのチェンジ後の衝撃は忘れられない。

「上手い、いや上手すぎるっ!」というのが正直な感想だ。

JUDAS PRIESTを脱退したロブ.ハルフォードの後釜を決める際の選考でベスト4に入っただけはある、いや彼がシンガーになってもよかったのではないかと正直に思ったのだ。

心底聴きたい衝撃にさせたのは、正直PARADOXまでだ。

それ以降は聴く気になれなかったのだ。

彼がバンドを解雇になったということもあるが、その後でたベストアルバムも買う気が起きなくて、そのまま買わずじまいになってしまった。

しかし、不思議だった。

英語圏の人間ゆえに、英語には感情がこめられないから感動できないという結論に達したが、かくいうDCアメリカ人だ。

それに歌もかなり上手い。

なのに、感動する領域に一歩踏み込めずに終わってしまっている感じだったのだ。

それが不思議だったのだ。

マークが参加したイングヴェイROYAL HUNTでのアルバムも同様だ。

マークアメリカ人だし、歌唱力も半端ない。

なのに聴く気が起きない。




もう自分はハードロックに感動できない年齢になってしまったのか…と惨憺たる気分になったが、まだ私は当時20代だった。

そんなことはないはずだ。

長くキャリアを続けていくと、それほどいい曲が作れなくなるのだろうか、と漠然とした思いを持っていたが実際はそうではなかったようだ。

しかし、その後明らかになるのだ。 ある時、楽曲はすごく自分好みなのに、感動できない音楽に出会ったのだ。

そのCDのライナーを何気なく見ると、そのバンドのシンガーが一切作詞をしていないということを発見したのだ。

それで分かったのだ。

シンガーが作詞をしないバンドの音楽は感動できないということを。

当然だろうか。

他人が書いた歌詞は、その人の感情、モラル、主張、経験が盛り込まれているゆえに、その感情を他の人が代弁できるはずがないゆえに、その歌詞を聴いても感動できないのは当然だ。




ゆえに、マークDCの歌を聴いても感動できなかったのだ。

マークが再度イングヴェイに参加した時の韓国でのライヴを収めたライヴDVDを買って観たが一向に感動できなかった。

だから、そのコリアでのオフィシャルライヴDVDはヤフオクで売ったのだ。

“Tears Of The Sun”



これまで、非英語圏のバンドで、SCORPIONSEUROPEといったバンドはかなりな回数聴いた思い出がある。

それぞれドイツと、スウェーデンの出身であるが、アメリカ人やイギリス人との違和感なく聴くことができた。

それはひとえに、これらのバンドのシンガーが歌詞を書いているからだ。

同じく非英語圏であるフィンランドHIMも私を虜にした。

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   HIM


英語圏にもかかわらずなぜかは不思議とわからなかったが、このバンドのリーダー兼シンガーであるヴィレ.ヴァロは自分で歌詞を書いているゆえに感動できたのだと納得がいった。

HIMは解散したが、今でもすべて所有し、どのアルバムも聴いている。

またノルウェーブラックメタルバンドのEMPERORも同様に感動できるし、虜になった私はこのバンドのアルバムはすべて一気に集めてしまったのだ。

このバンドのミュージックが私好みであるし、他のメタルバンドには絶対的に不足しているヘヴィネスとスピードを体現してくれている、ということもあるが、歌詞をシンガーであるイーサーンが書いているということが大きかったようだ。


   EMPEROR


曲も歌詞も、ギタリストがすべて担っていたバンドだったら、このようにファンにはならなかったことは間違いない!

やはり私にとって、そのバンドが非英語圏であるかそうでないかはあまり関係がなかったようだ。

たとえアメリカ人のように上手く英語で歌わなくても、歌詞を自分で書いて歌うかどうかが一番大事なのだろうことは間違いない。

昨今では中国人を見かけることは珍しいことでも何でもないが、やはりあの人たちは日本語が日本人よりもうまくない。

しかし、心底お客をもてなそうという気があるかどうかは、態度や語感でわかる。

日本語が上手いかどうかではないのは確かだ。

もてなそうという気のない人の人の態度はいらだたせるし不快だ。

しかし、そういう気のある人の態度は、日本語が下手でも愉快であることは間違いない。

その態度を見せるかどうかが重要なのだ。

もちろん日本語が上手いことも大事ではあることは間違いない。

シンガーであれば、歌詞を自分で書くかどうかが一番重要なのだ。

イングヴェイ.マルムスティーン、アンドレ.アンダーセン、共にネオクラシカルの第一人者だ。

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イングヴェイ.マルムスティー


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アンドレ.アンダーセン


マーク.ボールズは、その2人のバンドで歌ったという稀有なキャリアの持ち主だ。

しかし、その両方のキャリアでの仕事は私には評価できない。

何故なら、その両方のバンドでマークは歌詞すらも書いていないからだ。

書いていないのは、そういう能力が彼になかったからではなく、そのバンドのイニシアティブに左右されるのだ。

イングヴェイが、すべて自分でこなしたいというゆえに他の者には一切関わらせなかったのだろうか? その真相は確認できない。

またROYAL HUNTアンドレのワンマンバンドゆえに他のメンバーは一切作詞作曲ができないのだ。

しかし、DCがソロアルバムを出した時や、自分が結成したバンドであるSILENT FORCEではすべて彼が作詞作曲にかかわっているのだ。


 SILENT FORCE


ゆえに感情が歌から感じられ、今では愛聴盤になっている。

他人の書いた歌詞を歌う…これでは、真の感動を呼び起こすことはできない。

「俺が書いた歌詞は、マークがかなりの共感を持って歌ってくれたものだ。 だから感動するはず」だ、とイングヴェイにしろ、アンドレにしろ言うかもしれない。

しかし、マークが作詞していないがゆえに聴き手である私にとっては感動を呼び起こさなかったし、無意識のうちに疎遠になってしまっていたのだ。

ゆえに、私は評価できない。

しかし、そのシンガーが作詞してくれるのならば話はべつだ。

彼がイニシアティブを握って作ったRING OF FIREマークが曲つくりに参加しているという情報を得た。


   RING OF FIRE


よって、このバンドのモノは聴かなくてはならないだろうと思い、音楽ソフト会社にアクセスして、もうカートに入れている。

月末には買う気でいるのだ。

そうして聴いたら、またSILENT FORCEのように愛聴盤になる可能性は高い。

歌唱力に関しては何の心配も抱いてはいない。

彼ほどの実力なのだから心配するほうがおかしいだろう。

彼を初めて知ってから30年以上もたって初のマークの歌ったアルバムの愛聴盤になるのか…と思うと結構長かった、いや長すぎた時間だ(笑)

そのRING OF FIREに今から期待でワクワクしているのだ。


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今回はこれにて終了します。

ありがとうございました。

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