最近、MOTLEY CRUEのオフィシャルライヴDVDである『CARNIVAL OF SINS LIVE』を観た。
やはりこれまでアルバムやシングル合わせて8500万枚以上を全世界で売ってきたMOTLEY CRUEだけにオーラがみなぎっている。
しかし、それほど集中して観られない。
私が、心底好きなWHITESNAKEほど、このバンドを好きになれなかったこのバンドは、やはりWHITESNAKEの音楽性とは結構音楽性が違う。
私が永続して好きになるバンドは一定以上のヘヴィさが必須である。
そのヘヴィさを持っているこのバンドゆえに、それほど好きになれなかったのは、それほど自分の好きな音楽性を有していないからだと思っていた。
しかし、違っていた。
これまで私は、「シンガーが作詞をしないバンドの曲は集中して聴けない。ゆえにファンにもなれない。」ということを書いてきた。
それ以外で好きになれないバンドは、ヘヴィさがないか、魅力的な速弾きギターソロがない、というパターンであった。
しかし、なぜヘヴィさもあり、魅惑的な速弾きギターソロもあるMOTLEY CRUEが、自分の好みのバンド、必ずアルバムを買い、必ず来日公演に行くバンドになりえなかったのか、深く考えることはなかった。
このオフィシャルライヴDVDを観ながら、私はスマホでこのバンドのウィキペディアを見てみる。
すると、このバンドは、ほとんど、いやすべてベーシストのニッキー.シックスが作詞をしているのがわかったのだ。
ニッキー.シックス
ゆえにシンガーであるヴィンス.ニールは一切作詞せず。
それ故にも、やはりそれほどこのバンドをファンになれなかったのだ。
やはり、シンガーが作詞をしない場合は、他人の気持ちや経験を歌うことになるので、感情がこめられず、ゆえにそれほど集中して聴けなかいのだ。
それ故に、THUNDERにしろ、ROYAL HUNTにしろ、DANGER DANGERにしろ、FAIR WARNINGにしろ、ファンになれたアルバムは1枚かそのくらいで、アルバムが出たら絶対に買うというようなファンにはなれなかったのだ。
それと同様、MOTLEY CRUEもであった。
このバンドに出会ったのは、89年のことである。
レンタルレコード屋が、レンタルCD屋に鞍替えするということで、それまであったレコードを大量に安売りして出していたのだ。
そこで売られていたのは、アルバム1枚500円。
そこにMOTLEY CRUEの『GIRLS、GIRLS、GIRLS』も出ていたので早速買った。
『GIRLS、GIRLS、GIRLS』
そして聴いた。
そこでは放たれているぶっぱなしたヴォーカルに一気に虜になった。
また、ドラミングの壮大さ、ベースの躍動感あるリズムにも、いかれたといっても過言ではないだろう。
このバンドは、このレコードを買う前から、知っていた。
RATTと同じく、ロサンゼルス出身で、この地のハードロックシーンを牽引してきたバンドという触れ込みであった。
しかし、RATTと違って、このバンドは、声域が広く、スケールも大きいので、いろんな幅広いファンを獲得できるだろうとすぐに思ったのだ。
その通り、このアルバムは全米400万枚を売り、次のアルバムである『Dr.FEELGOOD』はさらにスケールの音楽を作り、世に出し、更なる飛躍をし、全米700万枚を売ったのだ。
『Dr.FEELGOOD』
これらのアルバムにも鳥肌が立つほどの興奮を覚えたのは言うまでもなかった。
“Dr.FEELGOOD” 『Dr.FEELGOOD』収録
それからほどなくして出した初のベスト盤である『DECADE OF DECADANCE』も早速買ってきいたのだ。
『DECADE OF DECADANCE』
これは変則的なベスト盤であり、リミックスが施したり、肝心のシングルチョイスされた既発のアルバムからの曲がライヴヴァージョンだったりと正規ではなかったのだ。
それでもそんな事お構いなしといった感じで私は受け入れた。
正規ベストではないにもかかわらず、全米で200万枚を売ったから大したものだ。
それから周知のように、ヴィンス.ニールはこのバンドを解雇になった。
そして戻るも、それから出したアルバムは、私の関心の外になっていた。
往年のアルバムのような良さがなかった、ということもあるだろう。
しかし、最大の原因は別にあった。
やはり、シンガーが歌詞を書いていないということだったのだ。
これまで、いいとは思えても、なぜか聴きたいという気が起きずに疎遠になってしまっていたアルバム。
最高の音楽性を有しているにもかかわらず、感動をそれほど呼び起こさなかったアルバム。
これらを紐解いて、ライナーを見ると、やはりシンガーが歌詞を書いていないということだったのだ。
MOTLEY CRUEもそうだったのだ。
ヴィンス.ニール
それが原因で、それほどこのバンドにのめりこめなかったし、来日公演が決まっても、行こうか行くまいか悩んだ末に、行かないということになってしまっていたのだ。
これまで書いてきたように、シンガーが作詞しないバンドのアルバムは、アルバム1枚だけ聴けるが、それ以降は全く聴けなくなってしまうのが通常だった。
マジックは1回だけなのだ。
しかし、MOTLEY CRUEは3回だけマジックが存在した。
しかし、それほど人さまに勧めたいという気は起きずにきたのが正直なところである。
92年のヴィンスの解雇劇は、全部歌詞を全部書かないことには満足しないニッキーと、歌詞を書きたいにも関わらず書けなかったヴィンスの対立という面もあったのだろうと思う。
ヴィンスは97年に一度、このバンドに戻るが、そういった確執を抱えたまま、ニッキーとは同じ鞘に戻っても、気持ちの上で本当に和解しているのか心配である。
周知のように、2015年の活動休止宣言から5年を経てこのバンドはまた再発した。
しかし、このバンドはシンガーが作詞しない。
ゆえにそれほど感動できないということがわかった以上、ライヴにはいけない。
2015年のラストツアーの来日公演にはいったが。
シンガーが歌詞を書かない。
それはいろんな理由があるだろう。
まず、シンガーが作詞の能力が全くなくて書かないパターン。
そして、カリスマ的なメンバーがいて、その人にイニシアティブが握られているゆえに他のメンバーは一切作詞作曲ができないパターン。
バンド内の事情を公表できないゆえに、詳細は分からないが、私はMOTLEY CRUEは後者のような気がする。
周知のように、ヴィンスは92年にバンドを解雇されて、自分のソロ活動を開始した。
その際に、スティーヴ.スティーヴンスというスーパーギタリストでありかつ、作曲能力を持つ人間をパートナーに迎えてアルバムが制作された。
それがアルバム『EXPOSED』だ。
その内容は素晴らしく、日本のHRファンの食指に触れて、東京では日本武道館での公演が実現したほどの出来だったのだ。
元MOTLEY CRUEという肩書だけでこれほどの偉業が達成できるほど世の中甘くない。
この年の晩には、中級ホールではあるが、再来日ができたほどだったのだ。
凄い人気あるアルバムだったがわかる。 スティーヴという素晴らしいテクと作曲能力を持った人を迎え入れたという幸運が、このような素晴らしいアルバムを出すことができたのだ。
スティーヴ.スティーヴンス
この人は、これまでマイケル.モンローやビリー.アイドルといった世界的に有名なシンガーはもちろん、日本の氷室京介とともにアルバムを作り、ツアーもこなしてきた。
いずれも名盤と語られる内容であることは間違いない。
“Sister Of Pain” 『EXPOSED』収録
しかし、いずれのキャリアでもパーナメントなメンバーにはならない、という共通点があるのだ。
飽きやすいというのではなく、自分のやりたいことをいつまでも探求し続けたいゆえに、同じバンドにとどまることはできないたちなのだ。
故コージー.パウエルと一緒なのだ。
そのスタンスは共鳴する、私とモラルが一緒だからだ。
しかし、ヴィンスのアルバムには1枚だけ関わっただけで、次のアルバムからは不参加だった。
作曲の最右翼を担っていたスティーヴが抜けたことで、バンドは窮地に立たされたのだ。
これまでのMOTLEY CRUEの歴史をウィキペディアで調べるも、ヴィンスは作詞に一切かかわってない。
しかし、作曲には何曲も関わっていた。
しかし、ソロキャリアを始めると、アルバム『EXPOSED』を見れば、ほとんどの曲で作詞をしているのがわかる。
『EXPOSED』
だが、作曲ではてんで能力がないのだ。
そして、スティーヴの後釜として入ったブレント.ウッズはほとんど作曲ができなかった。
ドラマーだったヴィッキー.フォックスやベーシストだったロビー.クレインも作曲に関わるも佳曲はできなかったようだ。
2枚目のアルバムである『CARVED IN STONE』が発表されるも、売り上げは低迷。
いろんな支店のタワレコや蔦屋で1000円前後の値段で多く放出されていたのを覚えている。
前回は、東京では日本武道館でできたが、この時の東京公演は新宿リキッドルームで3回ほどだった。
規模が4分の1以下になったのだ。
それで次のステップは…大方の予想通り、MOTLEY CRUEへの元鞘戻りだろう。 MOTLEY CRUEも後釜にシンガーとしてジョン.コラビを迎え入れたが、そのアルバムもゴールド止まりで終わり。
MOTLEY CRUE 94
前作の700万枚とは大違いだったのだ。
それでバンドとシンガーの思惑が一致して、オリジナルメンバーとして再結成した。
その時作ったアルバム『GENERATION SWINE』は賛否の分かれたアルバムだった。
往年のような勢いのなかったアルバムであったことは間違いない。
私は、これも含めたアルバムは一切、聴かなかった。
やはり先ほど書いたマジックが消えうせたからだ。
シンガーが歌詞を書かないバンドのアルバムは、アルバム1枚だけ聴けるが、それ以降はほとんど関心の外になるということである。
でも、シンガーが歌詞を書いたアルバムであれば、本元のバンドよりも出来で劣っていても感動できるのだ。
DC.クーパーはROYAL HUNTでは、アンドレ.アンダーセンにイニシアティヴを握られて一切作詞作曲ができないが、自分が結成したSILENT FORCEでは、すべての曲で作詞作曲をしている。
ゆえに、感動できるということであるROYAL HUNT以上に。
その現象はヴィンスのソロである『EXPOSED』で堪能できるはずだ、彼はほとんどの曲で作詞を担当しているからだ。
しかし、やはりシンガーがメインでないキャリアのアルバムは、大方のファンの関心の外になってしまい、売れなくなり、いつしか廃盤になってしまうのだ。
この『EXPOSED』は、いずれの音楽サイトでも廃盤である。
いくら名盤でも、これだけの歳月を経てしまえば無理もない。
『CARVED IN STONE』も同様に廃盤だ。
次に、ヴィンスのソロ『TATOOS AND TEQUILA』が2010年に出るが、これはカバーアルバムだ。
『TATOOS AND TEQUILA』
カバーアルバムは出した本人には興味あっても聴き手にはほとんど興味のないものだ。
ゆえにヴィンスの本物のアルバムはもう新品では味わえないということである。
本物とというのは、シンガーが作詞なり作曲に関わったアルバムということである。
そういうアルバムが、2つとも廃盤ゆえに、新品で味わえないのはファンにとって痛ましい事実ではないだろうか?
MTLEY CRUE再結成とはいっても、ヴィンスが作詞に関われないのであれば、やはり私は聴く気になれない。
彼のぶっぱなしたヴォイスが楽曲で炸裂してもである。
では、またスティーヴ.スティーヴンスと組めば、というような安易は考えは通用しない。
そんなに簡単に調整などできるはずもないし、MOTLEY CRUEでの活動の方がお金になるだろうからだ。
私が、「シンガーが作詞しないバンドは聴けないし、買わない」という奇妙な立場でいるが故に、このようなページを書くことになってしまったが、偽らざる本心である。
このような意見に共鳴してくれる人はいるだろうか?
いるならば教えてほしいものである。
ヴィンスの本物のアルバムであるということで、93年発表の『EXPOSED』を教えておきたい。
●興味のある人は以下よりどうぞ!
↓