(コラム)L.A メタルと倖田來未姉妹から学ぶ大ヒットの要件とは?

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 フィリップ.ルイス

LOUD PARK 17』において、L.A GUNSの姿を見ることができて安堵の思いがした。

トレーシー.ガンズフィリップ.ルイスの2人がこのバンドのメンバーであったが、一度この2人は決裂し、それぞれ違うメンバーを構成して、それぞれL.A GUNSと名乗って活動していたが、元のさやに戻ってくれたようだ。

しかし、この2人が戻ったこと思えば、この2人とは別に、オリジナルメンバーのドラマーが中心とするバンドが、これまた別のバンドをL.A GUNSと名乗って活動しているのだ。

しかし困ったものである。

その争いが、終焉に向かってくれることを願う。


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トレーシー.ガンズ


トレーシーフィリップのバンドは、2017年以降、アルバムを順調に出してくれた。

2枚とも健在なりと思える出来だったことは確かだ。

ヘヴィさも健在だし、ヴォーカルも楽器に打ち負けない強靭さを持っている。

年齢を重ねるとヘヴィさが失せて、声も強靭さをなくしていくアーティストはいるが、これらにはこのバンドはまぬかれているようでうれしい。

そしてこれからニューアルバムが出るようだが、それが復活から通算3枚目のスタジオアルバムになる。

復活作2枚目のTHE DEVIL YOU KNOWは、このバンド健在なりをアピールするに充分な出来だ。


“The Devil You Know”  『THE DEVIL YOU KNOW』収録


しかし難点を言えば、メロディの幅が狭いし、曲調もバラエティさに欠けているのだ。

このバンドの永遠のファンになると誓った人には、アピールできる作品ではあれどそうでない人にはちょっと難しいかなと思われる作品だ。

それに、バラードもないし、静寂さを売りにした癒しの曲もないのだ。

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こういう幅の狭い音楽は数百万人を相手にすることはできないのは歴史から見て明らかだ。

では、このバンドはヒットに恵まれていなかったのか?

そんなことはない。

デビュー作は全米100万枚を売ったし、セカンドも同様の売り上げ、サードは50万枚を売った。

こういう偉業をなせたバンドは、ハードロック全盛の80年代においても数十しかいなかったのを考えれば上出来だ。

それら、3つのアルバムには私も耽溺し、3つとも持っている。 91年のアルバム発表後に行われた来日公演にも行ったし、感動をして観ていたのだ。

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それくらい、よくできたアルバム群だった。

しかし、このTHE DEVIL YOU KNOWヤフオクに出し売りに出した。

出したその日に入札が出て、もう売るしかない事態に(笑)。

何故、売ったか?

やはりあまり聴かないと判断したものを持っていても、場所取りになるからと判断したからだ。

それはこれまでファンだったのに裏切り行為では、と思われるだろうがそうではない。

いつか聴くさと思っていても、いつまでも聴かないまま放置ということをこれまで無数に経験してきたのだ。

それに漏れないとおもったのだ、このアルバムは。

しかし、これから情報のアンテナを張り続け、このバンドのモノが出て好奇心が出たら買おうとは思っている。

音楽性の幅に制限がある。

これは同じ出身であるRATTにも当てはまるだろう。


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    RATT

このバンドは、デビュー作がいきなり全米300万枚を売り、一気にスターダムを昇った。

次も、全米で200万枚を売った。

次は100万枚を売った。

デビュー時の勢いはどうしたの?という意見が起きてもおかしくはないが、それを目指すべく起爆剤となるようなアルバムを出そうと模索したが、打開はできなかった。

それは、L.A GUNSと同じ。 やはり音楽性の幅が狭いということは、それだけファンの層も狭いままということだ。

それが、歳月の経過とともに、少なくなっていく。


新しい若い世代にアピール出来る音楽性を有していれば、大きなヒットを出すことや、往年以上のヒットを出すことも可能であろうが、それも音楽性の幅が広くなければ無理な話しだ。

これまた同じ出身であるDOKKENも同じ弱点ゆえに、全米マルチプラチナムというような記録は出せずじまいだった。

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        DOKKEN


100万枚を売ったアルバムを連続して3枚だしたことはあったが、それがこのバンドの限界だったようだ。

やはりL.A メタルというカテゴライズされる音楽内だけでは、マルチプラチナムを狙うには限界だったようだ。

しかし、1つMOTLEY CRUEだけは違っていた。

このバンドもL.A出身で、デビュー当初はまさにL.Aメタルを体現していたが、サードアルバムからその殻を破り、幅広い音楽性を有するバンドに豹変したのだ。

それが功を奏し、全米400万枚を売ることになった。

その次も400万枚、その次は700万枚と大飛躍するのだ。


 MOTLEY CRUE

この例から明らかなように、大ヒットや世代を超えてのファンの拡大は音楽性の幅は必須なのだ。

だが不思議というか、残酷であるが、MOTLEY CRUEのようにバラエティやキャッチーさを備えていても、ヒットに恵まれなかったバンドもいるのだ。

その代表がTYKETTOであろう。

何故、ヒットできなかったか。

いろんな分析が可能だろうが、ここは時間の制約から省かせてもらう。

何故、このようにRATTL.A GUNSの私のバンドへのアティチュードに違いが出てしまうのか?

それは単に、ファンになった情熱の差としか言いようがない。

どれだけ歳月がたっても、ファンでい続けたいと思わせる魅力が、RATTの方が私には強いのだ。

そう思わせる魅力がL.A GUNSには私にとって弱いということだ。

人によっては逆ということもありうるだろうし、そうなっても致し方ない。

しかし、趣味というのは、永続するパターンは少ないようだ古今東西

漫画でも一緒だ。

初めは誰もが、漫画に熱中してコミックを買う。

それを永続する人はどれだけいるだろうか?

最後の巻まで集める人がどれだけいるだろうか?

例えば、ドラゴンボール(42巻)を全巻集めた人はどれだけいるだろうか?

三国志(60巻)を全巻集めた人はどれだけいるだろうか?

『こちら亀有公園前派出所』(201巻)を全巻集めた人はどれだけいるだろうか?

ゴルゴ13(全204巻)を全巻集めた人はどれだけいるだろうか?(笑)




これらはどれも、最初ほうの巻は中古本屋にたくさん見つけることができるが、最後の方の巻はほとんど見つけることはできないのが通例になっている。

やはり最初の情熱はいつしか消え失せて、最後まで集めることには情熱がなくなっていて、中古本屋に売ることになったのだろう。

こういう例は、音楽の領域でも一緒だ。

最初の方のアルバムは売れても、年月がたつほど売れなくなっていくのだ。

最初の方は売れなかったけれど、10年の年月を経てようやくマルチプラチナムを獲得、という例はMETALLICAWHITESNAKEといった例はほとんどないのだ。

WS 87  
      WHITESNAKE

音楽性の急激な変化によって、多くの人の心を鷲掴みにし、また新たなファンを拡大して大ヒットという例はかなり難しい。

これはどのようなことをして、可能かというとやはり新たなソングライタープロデューサーの獲得ということだろう。

音楽性の変化にはこれらが必須だ。

同じようなソングライターと一緒に作曲していては、新たな作曲も新たな作詞もできるはずはない。

先のWHITESNAKEの例でいえば、ジョン.サイクスという新たなソングライターに、マイク.ストーンキース.オルセンという新たなプロデューサーを加えることで可能になった。

それまでこのバンドは、50万枚が全米で最高だったが、87年のアルバムでいきなり800万枚を売ることになったのだ。


白蛇の紋章
WHITESNAKE 87』


これまでの作曲者プロデューサーでは、こういった偉業は無理な話しだ。

しかし、それだけでも無理な話しだ。

やはりデヴィッド.カヴァーデールという幅広い声域と幅広い感情や熱意があったからこそ、大ヒットが可能になったのだ。

しかし、RATTティーヴン.パーシーにしろ、DOKKENドン.ドッケンにしろ声域は狭い。

ゆえに幅広い音楽を奏でることは不可なのだ。

それにティーヴンが雑誌で語っていたことは以下である。

「自分が感じたことしか歌詞にはできない」 それでいいだろうと思う。

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  スティーヴン.パーシー


自分が思ってないことを歌詞に書いても、それに聴き手にはハートが感じれないし、ゆえに感動できる代物にはならないだろうことは明白だ。

私はこれまで書いてきたように、作詞をしないシンガーのバンドはハートが感じれないから集中して聴けない。

ゆえにファンにはなれない、
ということである。

THUNDER、DANGER DANGER、ROYAL HUNTDREAM THEATERFAIR WARNING…こういったバンドは音楽性は秀逸だ。

しかし、シンガーが作詞能力がない、あるいはバンド内の事情で書けないゆえに作詞をしない。

それ故に一向に感動できないのだ。

しかしRATTにしろ、DOKKENにしろ、いずれもシンガーが作詞をほとんどしている。

ゆえに、感動できる曲の資質を持っているのだ。

ただし音楽性が狭いゆえに、ファンの層は限られているが。

それでも私の趣味を満たす音楽性を有しているし、シンガーが作詞をしているので感動できるのだ。

しかし、世代の超えて多くのファンを獲得できているかどうかはわからないし、2つのバンド、そして往年に大ヒットをしていたが、近年に再結成したバンドのアルバムの売り上げを見るとそうでないと判断してもいいのだろうか?

早計にすぎる嫌いはあるが、ほぼそういう見解でいいかもしれない。

もしティーヴンドンが、ヴォイストレーニングを受けて声域が広くなり、何かに触発されて大ヒットできるような歌詞歌いたいという衝動にかられた、ということが重ねられなければ大ヒットは無理だろう。

そのようなことが起きるのだろうか?

倖田來未の妹であるmisonoは最初day after tomorrowというグループを結成し、ヒットを飛ばしていた。

 
    day after tomorrow



2002年にデビューし、その年に新人賞も獲得し、ゴールドアーティスト賞も受賞した。

まさに、day after tomorrowの年だったのだ。

しかし、姉の倖田來未は泣かず飛ばず。

当初、倖田來未といっても通じず、misonoの姉といわなければわからなかったようだ。

しかし次の年から様相が一変する。

倖田來未の出したReal Emotion”が大ヒットし、これを期に大ヒットの連発を繰り返すことになったのだ。

 
     倖田來未


それからはday after tomorrowのヒットは平凡。

2002年のデビューから3年後に活動を休止し、今に至るも再結成の兆しはない。

それ以降は、芸能界にはあまり姿を見せなくなり、この時期にmisonoといってもだれかわからず、倖田來未の妹といわなくてはわからない事態になったのだ。

そして今も倖田來未はヒットを飛ばし続け、日本武道館東京ドーム、味の素スタジアムといったアリーナ、スタジアム級の会場でコンサートができているのだ。

misono倖田來未の違い。

それはやはり、歌詞の世界観にある気がしてならないのだ。

この姉妹は共に歌はうまい。

しかし、misonoの書く詞は、シングルを出した時に聴いた人が女子の中学生や高校生であれば感動する性質のものだ。

その時聴いた女子の中学生高校生が、その後3年たっても5年たっても聴き続けるかというと、やはり「初めて聴いたときは感動してたけど…」という感懐になってしまう性質のものではないだろうか?

ゆえにファンの永続は難しい。

 
    misono



また新たにday after tomorrowが新たなシングルやアルバムを出しても、その当時のファンは大学生専門学校生になり、その年頃になっても買いたい、聴きたいという衝動に駆られるかとなると難しいのだろう。

そのニューアルバムを出した時、中学生高校生の女子が聴いても「昔のバンドだし」のような感じで、関心の外になってしまうのだろう。


感動的な曲はあるのに残念だが…。

day after tomorrow  “My Faith”



しかし倖田來未の書く歌詞は、中学生であろうが、高校生だろうが、大学生だろうが、OLだろうが、主婦であろうが心を鷲掴みにされる性質を持っているのだ。

その人たちが、年月を重ねても、いつまでも聴きたいという性質を持っている。

それのみか、新たなファンをも獲得できる性質を持っているのだ。


 
     味の素スタジアム


ゆえに、この両者の違いが出てしまったとしか言いようがない。

misono倖田來未は両者とも歌詞を書ける能力がある。

しかし、前者はファンが限られる性質を持ち、後者は世代を超えて時間を超えてファンを獲得出来る性質を持っているのだ。

それがそのまま売り上げの違いになっているのだ。

ではどうすればいいか? misonoが世代を超えてファンを獲得することができる歌詞を書くようにしていけるかどうか、だろう。

そして、それを心底、その歌詞を感情込めて歌えるかどうかにかかっているのは言うまでもない。

しかしそんなことが可能かどうか、私は音楽業界に関わったことがないのでわからない。

そのような、予想もしなかったいきなりの大ヒットはごく少数。

その最たる例は、WHITESNAKEだ。

それと同じで、L.Aメタルに永遠に忠誠を誓った人だけにしか無理とすれば、こういう音楽チェンジと歌詞の世界観のチェンジが不可欠だ。

それが無理であれば、これからアルバムを出していっても、L.Aメタルの範疇でとどまっているバンド群は、やはり大ヒットはかなわない話しであろう。

WHITESNAKEのような大変化を望むかどうかは、そのアーティストの価値観に拠るとしか言いようがない。

RATTセカンドアルバムの発表後はBON JOVIを前座にしてツアーを敢行したので有名だ。

85年みそかには、あのマディソン.スクエア.ガーデンでライヴをおこなったのだ。



マディソン.スクエア.ガーデン


それくらいの大盛況。

しかし、その次のアルバムで立場は大逆転した。

それでRATTにもそのBON JOVIのような大ヒットを望んでいたが、それはかなわずじまい。

それは音楽性のみならず歌詞にも原因があったのだ。

RATTの歌詞は大衆向けではないのだ。

その詳細は実際に歌詞を読んでもらうほかない。

RATTは限られたファンだけにアピールでき、しかも新たな世代にもアピールするのは困難。

しかし、BON JOVIは多くのファン層を開拓し、新たな世代にもアピールできる。

それがアルバムの売り上げにも、公演の観客動員数にも表れている。

それでも、そんな大ヒットを望まなくても、アーティストは普通に生活していける。

昔、大ヒットしたアルバムが語り継がれれば、それが売れ続ける。

RATTのデビュー作であるOUT OF THE CELLARは、30年まえに読んだ時には「300万枚売った」ということであったが、今見ると500万枚に上がっている。

デビューアルバム
OUT OF THE CELLAR


それで印税が入ってくる。

それに、カラオケでそのアーティストの曲が歌われればまた印税が入ってくる。 またいろんな他のアーティストの曲が入ったコンピレーションアルバムが出て、それが売れればまた印税が入ってくる。

まったくもって音楽アーティストは羨ましいとしか言いようがない!

デビューから数年間に出したヒット作は、どのアーティスも、そのころにファンになったファン以外にはあまりアピールできない性質を持っている。

とすれば、コンピレーションアルバムはそのころのファンを大いに喜ばすものだし、またそのころに出したヒットアルバムを完全再現したライヴも大いにそのころのファンを喜ばすだろう。

“Rip And Tear”  『COCKED AND LOADED』収録


かくいうRATTOUT OF THE CELLARの完全再現ライヴを敢行し、それはブートレッグで見ることができる。

そしてL.A GUNSCOCKED AND LOADEDの完全再現をやり、それがオフィシャル盤になっている。

それがCOCKED AND LOADED LIVEである。



COCKED AND LOADED LIVE


これからもRATT、L.A GUNS両方とも応援していきたいが、どのようなヒットになるかはわからないのだ。

いずれにせよ、良ければ持ち続けるし、悪かったらヤフオク等で売りに出す。

いずれにせよ、この両者は30年以上も前からファンでいる。

ゆえにそれだけ自分にとっては魅力的なバンドであるということだ。

だからこれからも見守っていきたいと思っている。

なら何故、L.A GUNSTHE DEVIL YOU KNOWを売ったか?

佳曲が少ないし、あまり聴かないと判断したし、売っても後悔はないと判断したからだ。

ではファンの資格はない…そんなことはないだろうし(笑)、だれしもファンのバンドのアルバムを全部集め続けるパターンは少ないだろう。

何はともあれ、L.A GUNS完全再現ライヴのアルバムを以下に紹介しておきたい。


●以下よりどうぞ!
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●以下のサイトでも取り扱っています。
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タワーレコード

【HMV】ローチケHMV|音楽CD・DVD

今回はこれにて終了します。

ありがとうございました。

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