他のアーティストに夢中になって、魅力がわからなかったが、のちになってその魅力に気付いてファンになることが往々にしてある。
それは漫画でもある。
『週刊少年ジャンプ』で、「北斗の拳」や「キン肉マン」「魁!男塾」「ハイスクール奇面組」といった漫画を確認するだけで精一杯だったので、あまり読むことがなかったのだが、これらの漫画の連載が終わってしまったゆえに、それまで無頓着だった「こちら亀有公園前派出所」を仕方なく読むようになり、意外にもこの漫画の良さを発見し、それからはこの通称「こち亀」を夢中になって読むようになったのだ。
今もこの「こち亀」は私にとってのメイン漫画の1つだ。
こういうパターンはHR/HMでもある。
それがDEATHだ。
DEATH
これはアメリカの文字通りのデスメタルバンドだが、このバンドについては90年代の初頭から知っていた。
しかし当時は、HRバンドでいいのがあふれていたし、私はHRの方がメインだったし、ほとんど聴くことがなかった。
その後、90年代半ばになってHMのブームが始まり、その先駆的なバンドとして、JUDAS PRIESTやIRON MIDENの復権がかない、SLAYERやMEGADETHが浮上してきた。
しかし、私は年代的にSLAYERやMEGADETHの方が近いゆえに、これらのバンドに触れようとしてきたのだ。
SLAYER
しかし、80年代の佳曲揃いのアルバムに比べて、これらの90年代に出たアルバムはどれも勢い不足だったので、ほとんど聴かずじまいだった。
しかし、SLAYERの『REIGN IN BLOOD』やMEGADETHの『PEACE SELLS…BUT WHO'S BUYING』はHM史上最高のアルバムだし、今も私の愛聴盤だ。
しかし、これらのアルバムに拮抗できるアルバムが両バンドとも90年代に出すことがかなわなくなったのだ。
『REIGN IN BLOOD』
HMを代表するバンドですらこのくらいなのだから、それ以下の人気のバンドのは聴いても仕方ないだろうと、たかをくくっていたのだ。
しかし、それはのちになって後悔することになった。
過去のいつ買ったかは忘れたが、DEATHの『SYMBOLIC』を棚から取り出して聴いてみた。
そうしたらすごくよかったのだ。
●“Symbolic”
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このアルバムは、タイトルトラックの“Symbolic”から始まる。
スローなリフで始まるが、そこからして伝わってくるパッションが違う。
聴いているだけで凌駕されそうになる。
そして、いきなり急テンポに曲展開がなされるのだ。
その時の、ドラミングを中心としたメンバーのプレイの巧さが光る!
またミドルになって、急展開になる曲展開の妙もまたいい。
ソリッドなリフが、このバンドの得意とするところだろう。
そんなことを考えてしまうように、アルバム全体にその得意さが漲っているのだ。
張り込まれているのだ。
やはり、ヘヴィメタルというものは、ヘヴィさとスピードが命のはずだ。
その2つのミキシングの度合いが曲の全体的によくないと、佳曲のレッテルを張ることはできない。(レッテルというのは語弊があるだろうか…笑)
その度合いが見事にちょうどいいのだこのDEATHの音楽は。
そしてパッションにどの曲もあふれている。
曲展開が非常に良くて、絶妙のタイミングでそれがなされて、決して聴き手を飽きさせない。
それどころか、曲の世界に引きこんでしまうのだ。
それを一番実感できるのが5曲目の“1000 Eyes”だ。
●“1000 Eyes”
↓
このようなスピーディが基本で、妙の生きている曲を聴いているだけで気持ちがよくなる!
このようなシンプルなデスメタルバンドでは、非常に珍しい稀有なパターンだ。
そして、演奏レベルの上がった現代においては、速弾きソロは当たり前だ。
それを敢然とこなさなければ、耳の肥えた音楽ファンにはアピールできないだろう。
そういったギタープレイもさることながら、ドラミングもかなりの程度、レベルが高い。
曲展開の妙が素晴らしいが、それもこのバンドの演奏プレイの実力に支えられてのことである。
悠然とこなしてしまうから思わず脱帽だ!
ギター音はいたってシンプルにプロデュースされているが、現代的な音になれている人にも十分アピールできるレベルだ。
6曲目の“Without Judgement”の出だしを聴いたら、80年代初頭のヘヴィメタルブームの音を思い出してしまった。
その頃のヘヴィメタルバンドがいっぱい出てきたが、ゴールド以上の売り上げを果たすことなく、その後RATTやMOTLEY CRUEといったバンドがマルチプラチナムを獲得し、すっかりハードロックブームになったが、そのハードロックブームは、10年くらいしか持たなかった。
RATT
ヘヴィメタルバンドのMETALLICAが全世界で2000万枚以上を売るアルバムにより、シーンが一変させられたからだ。
そのブームの変遷の後に、このDEATHが活動を維持していたら、その気流に乗じて大成功したかもしれない、などと一瞬思ってしまった。
この“Without Judgement”には、SLAYERの"Jesus Saves"そっくりの曲展開がなされていて時代性を感じたものだ。 そしてのっけからスピードとヘヴィさで押しまくる“Misanthrope”にはただ押し切られるばかりでノックダウンされるだけだ。
また哀愁漂うアコースティックメロディで曲の終わりを告げる“Perennial Quest”の演出にも同様にノックダウンされるだけだ。
SLAYERにしろ、MEGADETHにしろ、80年代の前出のアルバムは、擦り切れるほど聴いたが、それ以外はいくら聴いても、右から左へ抜けてしまう感じで、時間の無駄に感じたので、中古盤屋に売った。
『PEACE SELLS…BUT WHO'S BUYING』
しかし、このDEATHのアルバムは、非常に素晴らしいので、次にもアルバムを買って聴きたいところだ。
期待に胸が膨らんでいるのだ。
しかし、このバンドはシンガーであるチャック.シュルディナーの脳腫瘍による死と、ベーシストであるスコット.クレンディレンの死によって、今は解散の道を余儀なくされている。
真ん中がチャック.シュルディナー
同じバンド内で2人がなくなってしまうとは…とこれ以上ない哀しみが胸を覆う。
その2人が関った素晴らしい音楽を後の世にもたたえてもらいたいゆえに、ここにその良さを書いた次第である。
これを期に、いろんな人がこのDEATHの音楽に触れてもらいたいものだ。
ここで紹介したのは、2人のメンバーがなくなったという理由ではなく、音楽が素晴らしいからというのが主要な理由だ。
昨今は、いろんなバンドが無数乱立していて、それ以上に無数にアルバムが存在している。
ゆえに、活動を維持していないことには、アルバムが入手可能であることは難しい。
解散した途端にアルバムが瞬く間に、廃盤になってしまうパターンは往々にしてある。
しかし、ことDEATHに関してはライヴ映像を除いてほとんどが入手可能だ。
1998年のアルバムが最後のアルバムであるにもかかわらずである。
これは脅威というほかない。
やはり、その良さや素晴らしさが、ファンの間でささやかれ続けたからであろう。
そうなった所以は、このアルバムを聴いただけでわかる。
やはりHM史上残しておかなくてはならない、という思いにさせるほどの出来だ。
このバンドの偉業を歴史に埋もらせてはならない…そんなことを考えてしまうアルバムだ。
●このアルバムは以下よりどうぞ!
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●以下のサイトでも取り扱っています。
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タワーレコード
【HMV】ローチケHMV|音楽CD・DVD
今回はこれにて終了します。
ありがとうございました。