3月2日にEX- THEATER ROPPONGIにEMPERORのコンサートに行ってきた。
このライヴが敢行されることを、この日の1か月前に知った。
それまでそのことを知らなかった私だが、すぐさま行くことを決めた。
それまで、昨年からMEGADETHの武道館公演を知ってから、何度も行くかどうか迷った。
チケットのサイト側も、MEGADETHのチケットを売ろうと必死だったのだろう、いろんなサイトの媒体を使って宣伝していて、私のスマホにもその広告が何度も出現していた。
それでもやはり行かないことに決めた。
やはり、これまでこのバンドのいろんなブートの安売りで買ってはみたものの、集中して鑑賞できたものはなかったし、いろんなマテリアルも中古として売ってきた私であるから、12000円ものお金を出す気にはなれなかった。
『LOUD PARK 15』にも、このバンドがトリになった日に行って、このバンドのライヴを鑑賞したが、ほとんどの曲にノレずに終わってしまったからだった。
MEGADETH
しかし、EMPERORの来日告知を見た時には、すぐさま行くときめたのだ。
やはりそういうバンドのライヴにこそ行くべきだし、そういうバンドのCDやDVDをこそ鑑賞するべきなのだ。
そのMEGADETHのライヴはWOWOWで同時中継された。
そのライヴが始まると、14000人入る武道館全体が撮影されていた。
ほぼ満員だった。
さすがMEGADETH、そしてあれだけの広告努力も実ったのだと確信した。
しかし、やはり私はノレなかった。
ノレる曲もあったが、そうでない曲の方が多かった。
このバンドが私にとって、フェイバリットなバンドになる日が来るのだろうか?
このバンドと、EMPERORがフェスで同居したこともあったようだが、私がそのフェスに行ったら、EMPERORのは大いに興奮するだろうが、MEGADETHの順番になったら腕を組んでみただろうと思う。
そしてEMPERORのライヴ当日になった。
会場は、まず1階席の人間を先に入れて、1階の人間がほぼ全員入ったら、2階の人間を入れるということになっていた。
会場の外は寒いし、風が吹いている。
時間内に席に到着して観れるのか心配だった。
それは杞憂に終わったが、長い行列ができていて自分の欲しいグッズが買えるかどうかが心配だった。
ライヴが終わってから買うということも考えていいが、それだと売り切れになりそうな経験があったのでそれは避けた。
長い行列に並んで、開演の15分前に買うことができたが、どのTシャツもLサイズが売り切れになってしまっていた。
Mサイズも着れないこともないが、自分にはLサイズの方がいいのだ。
しかし、ここでしか売ってないであろうデザインのシャツしかないので仕方なくMサイズで我慢した(笑)
ニューアルバムのリリースもないのに、これだけの規模の会場でコンサートできるのもすごい。
ここは1800人超を擁する会場だ。
このHMが盛り上がりの失せた時代に、この規模でできることもすごい。
二重の意味で凄いのだ。
HR/HM全盛の時代でも、このキャパでできたバンドは少なかった。
ましてや、このご時世でできることは驚嘆の事態だ。
ニューアルバムがリリース出来ない状態で、これだけのキャパでできるためには、新しいファンの開拓をしなければ無理な話しだ。
それがかなっていたように思う。
ブラックメタルのカリスマとしていろんなメディアで吹聴されていたのだろうが、それだけではファンを獲得することはは可能な話しだ、実際に音楽がよくなければ。
EMPEROR
実際に聴いてみて、興奮したファンは多かったのだろう。
それがかなってか、4枚のスタジオアルバムは、どれも入手可能だ。
このバンドは、正式なデビューは94年だった。
94年のデビューとなれば、当時にファンになった人は今はアラフィフの人が多いはずだ。
ゆえに40代の人が中心のファンが多いかと思いきやそうではなく、会場をみわたすと、30代の人を中心に20代の人も多く散見したのだ。
やはり新しい世代のファン開拓がかなっていたのだ。
また思うのは、アルバムリリースが少なかったことが幸いしているのではないだろうか。
それゆえに、このバンドは伝説的なバンドとして君臨できている、そんな気がするのだ。
アルバムリリースを重ねて、リリースするごとに、いいアルバムができずじまいだったら、ファンからは「あの駄作続きのバンドか…」というような認識に変わっていたに違いない。
STEELHEARTがまさにその好例なのだ。
STEELHEART
このバンドは、デビュー作がすごくよかった、いや良すぎたのだ。
しかし、セカンドから作品の出来がトーンダウンしてしまい、次もその次も佳曲の少ない平凡に近い出来のまま終わってしまっていたのだ。
最新アルバムは、なかなかの出来だったが…。
EMPERORは、2001年の最後のアルバムから、一切ニューアルバムが出ていないのだ。
しかし、それらのアルバムはファーストから4枚のアルバムがすべて佳曲揃いだった。
それが買って聴いてファンになった人に概念化されて、ファンとしての心の絆を繋いでいるのだ。
もし、その4つのアルバムがそんなに良くなかったのならば、このような現象は起こらなかったに違いない。
私も「このバンドの初期のアルバムはよかったんだけどねえ…」で終わっていた可能性が高い。
しかし、こと私の感想が多くの人の心を代弁しているとは思うが、4つのアルバムがどれも素晴らしいがゆえに、郷愁の念が心にインストールされて、いつまでもファンでいたいと思うのだ。
そして、ライヴにも足を必ず運びたくなる。 このバンドのシンガーであるイーサーンは、これから先このバンドのアルバムは作らないとインタビューで公言していた。
イーサーン
やはりアルバム数枚が世界中で売られていて食うに困らなくなると、やはり自分のしたいことに没頭してしまいがちになるのがミュージシャンの行動様式なのだ。
EMPERORのアルバムよりも、彼のソロアルバムの数の方が多い。 これからその試行を重ねていくつもりだという。
しかし、人生公言通りにはいかないことも多々ある。
彼がまたバンドのアルバを作る気になる日を待とうではないか!
しかも、このバンドのアルバムはデビュー作からして、プロフェッショナリティに溢れている。
●“Into the Infinity of Thoughts” 『IN THE NIGHTSIDE OF ECLIPSE』収録
↓
音のプロダクションはデビュー作ゆえに低予算だったのであろうか、そんなに高くはないが、演奏や構築美のレベルの高さは半端ない。
良く曲の構想をして、実際に曲にして、それを演奏で体現できるなと感心するばかりの出来だ、デビュー作の『IN THE NIGHTSIDE OF ECLIPSE』は。
『IN THE NIGHTSIDE OF ECLIPSE』
このアルバムは今も愛聴盤だ。
このアルバムのできが素晴らしいがゆえに、このアルバムの完全再現ライヴがかなったのも勿論、次の『ANTHEMS TO THE WELKIN AT DUSK』も完全再現ライヴが敢行されたのは周知の事実だ。
しかし次の『IX EQUILIBRIUM』も、そのまた次の『PROMETHEUS;DISCIPLIN OF THE FIRE & DEMISE』も完全再現するにふさわしい品位を備えている。
やはり、ヘヴィメタルたるもの、ヘヴィさとスピードを突き詰めたものにしてくれないと私は満足できないたちだし、しかも荘厳で奥行きが深くドラマ性を秘めた広大な雰囲気を擁していながら曲展開がなされている音楽でいれば何も不満はないし、そういう音楽を体現してくれるバンドがいてくれるのであれば、いつまでもファンでいたいし、ライヴも告知されれば、0.1秒で行くと決めてしまう。
そういうバンドがまさにEMPERORなのだ。
90年にSLAYERの86年の作品である『REIGN IN BLOOD』を聴いて、「このバンドのファンで永続的にいたい!」と思ったが、これに匹敵するアルバムはついぞ出してくれなかった。
『REIGN IN BLOOD』
その他のアルバムは、アルバム1枚につきいい曲が1つから3つくらいしかなかったので、これではアルバム1枚通して聴けないと聴くのを自然と避けてしまい、いつしかアルバムを売ってしまっていたのだ。
やはり、ヘヴィネスとスピードが中途半端、耳朶に残るメロディも少なく、曲展開もそれほど印象の残らずじまい…という感じだったのだ。
しかし、そういう不満を払拭してくれたのがほかならぬEMPERORだったのだ。
ゆえに、この日も外人のプロモータがステージに出て始まる告知をしに来た時には、すごい興奮した。
デビュー作のドたまを飾る“Intro”が流れる。
あのおどろおどろしいカルトティックな雰囲気満載、緊張感満載のSEに興奮しない人がいるだろうか?
メンバーが次々に登場し、ブラックメタル宜しく金切声のシャウトがイーサーンによってなされ、即速に演奏になだれ込む。
やはり謹厳実直な演奏にはいつも興奮してしまう。
やはり、メタルたるものヘヴィさとスピードを押し詰めた音楽でなければ興奮する状態にはならないのだ私は。
そういう音楽を初期に奏でてくれたにもかかわらず、その路線を捨ててしまったがゆえに、MEGADETHはライヴに足を運ぶフェイバリットバンドになれなかったのだ。
やはりEMPERORは、パワフルかつスピーディを突き詰め、そしてピンポイントなタイミングで曲展開がなされて、しかもドラマ性を擁しながらも、奥行きの深い音のプロダクションを施しているので絶対に集中して聴いてしまうのだ。
それプラス、シンガーが歌詞を書いていることも大きい、というかそうでなければ私は集中して聴けないのだ。
歌詞は、その書いた人の思いや経験、信条、考えといったものが表れるものだ。
それを歌に込めるためには、シンガーが歌詞を書かなくては叶う話ではない。
シンガーが作詞しないバンドのミュージックは、いくら曲や演奏がよくてもいつしか疎遠になって聴かずじまい。
それらのアルバムをいつしか多く売ってしまっていたのだ。
しかし、このバンドはシンガーのイーサーンがほとんど全て歌詞を書いているがゆえに、聴いていて感動するのだ私は。
彼はノルウェイ人であるが、英語の歌詞であろうが自分で書いて歌えば自ずと感情がこもるものなのだ。
しかし、その音楽は全体的にカルトティックだ。
こんなに好き嫌いのわかれる音楽を体現できるバンドメンバーをよく招集できたなと感心する次第だ(笑)
そういうおどろしい音楽をこよなく愛するファンが多いことも驚くのだ(笑)。
●“Ye Entrancemperium” 『ANTHES TO THE WELKIN AT DUSK』収録
↓
そういう音楽が好きな人は、ギリシアのSEPTIC FLESHもかなりお勧めできる。
こういう音楽は、オーケストラとの共演を果たすことで、その音楽的な魅力を相乗させることができるのだ。
そんなことを思っていたら、このバンドがオーケストラとの共演を果たしたライヴDVDを出していたということを知って、すぐさま買って聴いた。
やはりかなりバンドの魅力を相乗させているのがわかった。
EMPERORのファンならば、このSEPTIC FLESHも興奮して聴けるはずだ。
SEPTIC FLESH
すぐさま聴いてみることをお勧めしたい。
そして、EMPERORも是非ともオーケストラとの共演を果たしたライヴを敢行し、それを映像媒体にしてほしいものである。
この来日公演の趣旨は、これまでのバンドの集大成を披露するという触れ込みだった。
しかし、ニューアルバムリリースなしのグレイテストヒッツライヴといっていいだろうと思う。
特に変わったことはしていなかったのだ、バンドの代表曲をこれまでとは曲順を変えてこなしていただけだったので。
ならば今回は、『IX EQUILIBRIUM』の完全再現をしてくれればよかったと思うのだが人生、自分の思った通りにならないのが痛い。
そして次は『PROMETHEUS;DISCIPLIN OF THE FIRE & DEMISE』の完全再現ということも希望したいが、それもまた難しい(笑)。
最初からこのバンドのファンになったことで、メンバー登場から笑みがこぼれた。
速く、しかもドラマ性を込めれば必然的に演奏力が高くないといけないが、それを難なくこなせているし何よりもそれを頭で描いているのみならず、音楽で体現しているから凄い。
エンディングは、『ANTHEMS TO THE WELKIN AT DUSK』の最後を飾るハードボイルド映画のエンディングのような壮大なビジョンを聴き手に抱かせるSEの"The Wanderer"だ。
こういう演出をライヴにフィットさせるのも、メンバーの作曲力あってこその物種だ。
そんなことを考えてしまったライヴであった。
この日のセットリストは以下。
アンコールなしの突貫ライヴだったのを付言しておく。
“Intro”
"Cosmic Keys to My Creations & Times"
"Thus Spake the Nightspirit"
"The Loss and Curse of Reverence"
"The Acclamation of Bonds"
"With Strength I Burn"
“Curse You All Men”
"I Am the Black Wizards"
"Towards the Pantheon"
"I Am the Black Wizards"
"Inno a Satana"
"Into the Infinity of Thoughts"
"Ye Entrancemperium"
"The Wanderer"
●このバンドに興味を持った人には、以下このバンドのベスト盤をお勧めしたい。
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Emperor エンペラー / Scattered Ashes | ||||
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●以下のサイトでも取り扱っています。
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タワーレコード
【HMV】ローチケHMV|音楽CD・DVD
今回はこれにて終了します。
ありがとうございました。