最近、ソロのギタリストであるジョー.スタンプの最新作『DIABOLICAL FEROCITY』を聴いてみたのだ。
「なんだこの出来の良さは!!」…これが最初に脳裏に浮かんだ言葉だった。
この人がALCATRAZZにギタリストとして加入したことをネットで調べて知ったのだったが、なにやらこのバンドは奇妙な事態になっているようだ。
周知のように、このバンドはグラハム.ボネットが中心になって83年に結成されたものだ。
かの有名なイングヴェイ.マルムスティーンをギタリストに据えて。
そのALCATRAZZが2017年にグラハム.ボネットを中心に復活してライヴをおこない、アルバムを出しライヴアルバムも出した。
しかし、シンガーをグラハムを中心にしたバンドと、ドゥギー.ホワイトを中心にするバンドと2つに分かれてしまったようだ。
L.A GUNSやGREAT WHITEやRATTなどのように、同じバンド名を冠しながらも、違うメンバーで2つのバンドを名乗るという状況がこのバンドにもきてしまったようだ。
私が、興味を持ったのは、ドゥギーの方のバンドだった。
この人は95年にRITCHIE BLACKMORE’S RAINBOWのシンガーとして抜擢されたことで興味を持った。
そのあまりに現代的ないでたちと歌唱スタイルは瞠目すべきほどのモノがあった。
そして、リッチーの様式美が盛んに喧伝されていた古風なコスチュームと音楽性とドゥギーの組み合わせが興味を立てたのだ。
ドゥギーの歌のうまさはそこで確認できた。
しかし、それを活かすには、やはりリッチーの腕では無理ということが分かった。
やはり80年代に活躍したテクニカルなプレイヤーでなければ。
リッチー.ブラックモアにはタイトでテクニカルなプレイは不可能だ。
リッチー.ブラックモア
DEEP PURPLEの時代からフィンガリングとピッキングはちぐはぐだし、耳を惹くフレーズも私には皆無なゆえに、この人を知ったときから「なぜこの人が世界一のギタリストなどと崇められているのだろう…」と不思議だったのだ。
しかし、ドゥギー.ホワイトは古典的なバンドではなく、タイムリーな音楽を体現するにうってつけなルックスを有していて、しかもヴォーカルの線もかなり強い。
95年のRITCHIE BLACKMORE'S RAINBOWで歌うとなっても、ギターがリッチーではそれを活かすことはできてはいなかったのだ。
そんな思いでいたゆえに、この人の良さを活かしていないと判断し、RITCHIE BLACKMORE'S RAINBOWは私からは疎遠になっていった。
しかし、この1度の結成で終わってしまったRITCHIE BLACKMORE'S RAINBOWの後に、周知のように彼はイングヴェイ.マルムスティーンのバンドに加入する。
彼の声の良さには認識できていたので、この人がイングヴェイのバンドでやるとなっては、かなり期待がかかったのだ。
すばらしい歌唱と、すばらしいギタープレイ、これが同居すればかなり素晴らしい音楽を生み出すことは可能になることはこれまでの経験から明らかだった。
しかし、このころ(2002年)には、イングヴェイはすでに更年期障害が始まっており、作曲においてもプレイにも冴えや威力がなくなってしまっていたのだ。
しかも、イングヴェイが作曲はもちろん作詞まで全部こなしてしまうようになってしまったので、ヴォーカルにも感動できなくなってしまったのだ。
なぜなら、歌詞は書いたその人の心情や思い、経験や主張が入っているのであり、書いた本人でない人が歌っても、それに感情を込めることなど不可能なのだ。
ゆえに、作詞した人でない人がどんなに上手く歌っても感動できないのは明白だろう。
※参考ページ
作曲のみならず、作詞もすべてイングヴェイがこなしてしまう…これではまるで感動できない悪しきトータルコントロールだったのだ。
この期のイングヴェイのアルバムは感動できる代物にはなれず。
ゆえにドゥギーが参加したイングヴェイのアルバムは2枚とも(『ATTACK!』と『UNLESH THE FURY』)売りに出したのだ。
いくら歌唱力が素晴らしくとも、歌詞をシンガーが書かない場合感動できる代物にはなりえないのだ。
88年のBON JOVIを見て、アメリカンハードロックの最前線をこのバンドが走り続けてくれる、と当時は思ったが現実はそうならず、その線でいってくれるのは、私の中ではDAUGHTRYに取って変わった。
DAUGHTRY
86年のSLAYERの『REIGN IN BLOOD』を聴いて、このバンドこそがヘヴィメタルの前線を走り続けてくれると期待していたがそうはならず、私の中ではEMPERORに取って変わった。
EMPEROR
そして、90年にイングヴェイ.マルムスティーンを知って、この人こそがネオクラシカルなHRの前線を走ってくれると信じていたがそうはならず、99年の『ALCHEMY』以降はずっと駄作続きだ。
その停滞を打破してくれるアーティストを待ち望んでいたが、今になってジョー.スタンプが果たしてくれるとは思わなかったのだ。
この人のことは90年代の半ばから知っていたし、そのソロアルバムのジャケットもイングヴェイが使っているストラトキャスターが載っていたゆえに「イングヴェイからの影響ありか?あるいは亜流か?」と詮索するだけで、実際アルバムを買って聴くことは出来なかった、お金がなかったゆえに…(笑)。
しかし、かつてイングヴェイが在籍していたALCATRAZZのギタリストに、イングヴェイを模倣しそれを自身の音楽に昇華させていたジョーにALCATRAZZのギタリストとして白羽の矢が立つのは自然なことで、それゆえにジョーに興味を持ち、20年以上ぶりでイングヴェイ風ミュージックに興味がわき、そして聴いてみたが、それがこのようにいい出来であるとは予想外だった。
こう書くと、オリジナルがイングヴェイならば、イングヴェイ路線はイングヴェイの方がいいんじゃ、という素朴な疑問がわきそうであるが実際は違う。
今のイングヴェイは演奏にも興奮する要素がなくなってしまったのだ。
最近のアルバムを聴けば、それなりにイングヴェイ節は聴けるが、それでも興奮することはなくなってしまったのだ。
冴えもないし、パッションも感じれないのが実情だ。 84年の彼のソロデビューから97年の『FACING THE ANIMAL』までは感動できる素晴らしいアルバムではあるが…。
しかし、ジョーの最新のソロアルバムは、最初から最後までテンションが上がりっぱなしでアルバムを聴くことができるのだ。
ジョー.スタンプ
最初から最後まで、インストしかないアルバムをここまで緊張感を維持しながら聴かせるギタリストはジョーが最初である。
この人のアルバムを全部集めようかと思ったくらいである。
ではそのアルバムからの1曲を以下、紹介したい。
↓
しかし周知のように、インストアルバムは、廃盤や生産中止になりやすい。
概して、退屈しやすいからだ、歌の入っているアルバムに比べて。
ゆえに、みんなそちらを聴いてしまうのだ。
ジョーのアルバムを調べたら、2枚を残してすべて廃盤だ。
その入手可能なものをすぐに収集しなくてはならないようだ!(笑)
このような事象を見ていると、RATTが20年ぶりに最高なアルバム(=『INFESTATION』)を出してくれた事情と重なり、オーバーラップするのだ。
ALCATRAZZの2017年の再招集においてイングヴェイ.マルムスティーンにも当然声がかかったが、イングヴェイはにべもなく断ったようだ。
「ALCATRAZZの他のメンバーは、これまで活動していなかった。
だけと俺はずっと活動してきていた。
なのに、再結成でまた一緒に活動を続けるのはいただけない。」という主旨だった。
しかし、その時にイングヴェイは更年期障害のさなかにいたので、このプロジェクトに参加したら、それも克服できるのではないか、と期待していたゆえに残念だったが、今となっては結果はよかったと思う。
やはりプレイ自体に冴えがないからだ。
イングヴェイ.マルムスティーン
他の人と共同で作曲をしていい曲が作れても、プレイがよくなかったら意味がない。
もしALCATRAZZに加入しても、いいプレイは聴けなかったのではと判断せざるを得ない。
今のイングヴェイに期待するよりも、今はジョー.スタンプに期待を無意識にしているというのが実情だ、私の中では。
往年に活躍したアーティストに対して無批判に美辞麗句だけを掲げるのはいだだけないし、思ってないことを書いても読んでいる人には嘘とバレてしまうのだ。
だからこういう場では正直に書いたほうがいいのだ。
今回のドゥギーとジョーが同居したALCATRAZZのアルバムを聴いて良かったら、ドゥギーがこれまでかかわったいろんなバンドのアルバムを散策して買うリストに入ることになる。
また金欠状態が来そうだ(笑)
ドゥギーとジョーの同居したALCATRAZZの作品については、出来次第、この場で紹介したいと思っている。
まずはジョーの最新ソロ『DIABOLICAL FEROCITY』を以下に紹介したい。
●以下よりどうぞ!
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Joe Stump / Diabolical Ferocity 輸入盤 | ||||
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●以下のサイトでも取り扱っています。
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タワーレコード
【HMV】ローチケHMV|音楽CD・DVD
●参考記事
以下、イングヴェイ.マルムスティーンの影響を受けたアーティストを2つ紹介したい。
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