ロブ.ハルフォード & デヴィッド.カヴァーデール
今回は、デヴィッド.カヴァーデールとロブ.ハルフォードについて書いていきたいと思う。
この2人も51年生まれで、イギリスで生まれたという共通事情がある。
そして2人ともシンガーであるということも共通している。
デヴィッドはWHITESNAKEのシンガーで、ロブはJUDAS PRIESTのシンガーであるのは周知の事実だ。
私がこの2人について知ったのは、88年のことである。
いまはなき『MUSIC LIFE』で号は違えど、読んで知ったのだ。
当時の音楽情勢は、まさにハードロックの全盛期で、JUDAS PRIESTのようなメタルバンドは、ちょっと苦戦を強いられている観があったのは否めなかった。
WHITESNAKEは、当時の最新作である『WHITESNAKE』が全米で500万枚以上売れていて、JUDAS PRIESTの最新作である『RAM IT DOWN』は全米で100万枚を売ったのみであった。
しかし、このバンドに興味を持った私は、中古盤でいろいろ買って聴いてみた。
やはり巧いという印象は正直に感じたものだ。
ヴォーカルも他のプレイヤーも。
しかし、そのうまさがそのまま売り上げに直結しないのも、この当時からわかってきていた。
そして、その2年後、超強力盤である『PAIKNKILLER』が発表されてそれを聴いたが、さらなる発展を感じたのだ。
『PAIKNKILLER』
しかし、メタルが全盛でないのか、あるいはこういう音楽自体がそんなに流行る性質を持っていないのかはよくわからないが、かなりの出来のいいアルバムであるにもかかわらず全米で50万枚しか売れなかったのだ。
その時には、WHITESNAKEの新作である『SLIP OF THE TONGUE』も発表されていたが、これは前作からは程遠い全米100万枚で終わってしまったが、それでも前作の余勢があったゆえに、アリーナがメインのライヴを数多く敢行していた。
日本での公演日程は以下である。
9月19日 横浜アリーナ
9月21日 愛知県体育館
9月22日 神戸ワールド記念ホール
9月25日 日本武道館
9月26日 日本武道館 (S席6000円)
しかし、この次の年に行われたJUDAS PRIESTの来日公演日程は以下である。
4月12日 大阪フェスティバルホール
4月13日 神奈川県民ホール
4月14日 東京NHKホール
4月15日 東京代々木オリンピックプール
これをみると、やはりメタルバンドは、ハードロック勢にはかなわないのか…と思ったものである。
しかし、この年の夏に出されたMETALLICAの『METALLICA』アルバムが引き金になり、メタルの情勢が様変わりする、いや一変することになる。
『METALLICA』
このアルバムが全米初登場で1位を獲得し、全世界でセンセーションを引き起こしたのだ。
このアルバムは、これまでに全世界で2100万枚を売ることになったのだ。
このアルバムの特徴であるヘヴィかつミドルテンポかつHMであるにもかかわらずHRファンをも虜にしてしまうメロディ満載という内容を擁した音楽をどのバンドも踏襲することになり、特にヘヴィかつミドルテンポという内容が特に踏襲されたのだ。
そして、それからさらにその特徴が突き進んで、けだるい音楽がはやりだしたのだ。
その全世界的な大がかりな様変わりにより、HR勢が苦戦を強いられるようになり、HM勢には潤いのある情勢に変化したのだ。
なぜならヘヴィかつミドルテンポという音楽はハードロックには魅力を減退する結果になるが、ヘヴィメタルにはその魅力をさらに底上げすることになるからだ。
あのMETALLICAのアルバムのヒットにより、ヘヴィかつミドルテンポという音楽の先駆的なミュージシャンは誰か、という大衆の関心が高まった。
もちろん、オジー.オズボーン擁するBLACK SABBATHに決まっている。
90年代初期には、BLACK SABBATHのオリジナルメンバーによる再結成が話題に上るも、実現しなかったが、これだけのヘヴィかつミドルテンポが主流の音楽ブームが下地であれば、当然それも容易になったことは間違いない。
それが98年に、オリジナルBLACK SABBATHの再結成という形で実ったのだ。
この再結成だけでなく、その音楽とジャンルを同じくするバンドへの注目ということも起こって当然だった。
やはりJUDAS PRIESTにも注目が集まり、その他、PANTERA、MEGADETH、SLAYERといったメタルバンドも注目されていったのは間違いない。
MARILYN MANSONやSLIPKNOTがデビューし、短期間で跳躍できたのも、こういったラウドブームが下地にあったからだといえるだろう。
こういったヘヴィラウドブームの勃興により、その祖であるBLACK SABBATHや、そのシンガーであるオジー.オズボーンのバンドは世界中のフェスでトリを務めることになる。
80年代には、セカンドビルやサードビルで登場することもしばしばだったOZZY OSBOURNEだったが、95年の『MONSTERS OF ROCK』でのセカンドビルを最後に、それ以降はずっとトリをし続けている。
それが、METALLICAが引き起こしたラウド.ヘヴィミュージックブームであるとすれば、オジーはMETALLICAに感謝してしかるべきであろう。
83年に『SAINTS AND SINNER』のツアー時には、WHITESNAKEがメインアクトになり、OZZYを前座にしていたのだ。
それが昨今のラウドブーム下においては不可能である。
いかにも歴史の皮肉というほかない。
この事実を知って、このころのハードロックブームを知らなかった人にはかなり意外なことに思えるだろう。
やはり、ヘヴィミュージックというアクの強いもののほうが、クセになるからだ。
人の心をグっとつかんで離さない効用があるのはいうを待たない。
それゆえに、いろんなメタルバンドが闊歩する状態になれば、そういう音楽を体現し、それを長年維持してきたバンド、しかもいい音楽性を有して、演奏も巧いというバンドであれば、受け入れられやすくなるのは当然の成り行きだろうと思う。
やはり、このような情勢ゆえにJUDAS PRIESTがアルバムを売りやすく、そしてライヴでも人を集めやすくなるのも当然の成り行きだろう。
私はヘヴィメタルも好きだが、それ以上にハードロックのほうが好きなゆえに、こういったブームにはあまり見向きもしないでいた。
しかし、2009年にネットをふと見たときに驚いた。
あのJUDAS PRIESTの『BRITISH STEEL』完全再現のライヴが告知されたときに、そのライヴの前座にWHITESNAKEが起用されているというではないか!
JUDAS PRIESTの、アメリカでのこれまでの最高の売り上げは、『SCREAMING FOR VENGEANCE』の200万枚が最高だ。
しかし、WHITESNAKEの最高売り上げは『WHITESNAKE』の800万枚なのだ。
こういう背景があるにもかかわらず、WHITESNAKEが前座という事実に、信じれなかったのだ。
JUDAS PRIESTは出身はイギリスなのだ。
しかし、アメリカを主なマーケティング戦場にしていたのだが、77年の『SIN AFTER SIN』から、90年の『PAINKILLER』まで11作連続でゴールドやプラチナを獲得してきたのだ。
かたやWHITESNAKEは、83年の『SLIDE IT IN』と87年の『WHITESNAKE』と89年の『SLIP OF THE TONGUE』の3作のみがプラチナを獲得したがゆえに、JUDAS PRIESTの長年にわたる着実性では劣っていたのだ。
確かにJUDAS PRIESTは全米で500万枚とか800万枚とかいった大ヒットは達成していないが、小さくとも長年にわたるヒットを維持したほうが、ファンとの心理的な距離は近くなるのは明白なようだ。
ゆえに、JUDAS PRIESTのほうが後の出演になるのだろう。
この2者がギグをしてWHITESNAKEのほうが後になることもあるが、それは稀である。
また、2003年にWHITESNAKEは再結成され、JUDAS PRIESTもロブが戻ってオリジナルメンバーでの再結成されて、それぞれアルバムを出したが、JUDAS PRIESTのほうがヒットしているのは明白だ。
JUDAS PRIESTのアルバムは、『ANGEL OF RETRIBUTION』『NOSTRADAMUS』『REDEEMER OF SOULS』『FIREPOWER』と発表されたが、それぞれ、全米で13位、11位、6位、5位とかなり上位にランクしている。
かたやWHITESNAKEは、『GOOD TO BE BAD』『FOREVERMORE』『PURPLE ALBUM』『FLESH AND BLOOD』と発表されて、それぞれ62位、49位、87位、131位とヒットに恵まれていない。
あの『WHITESNAKE』の勢いはどこに!という言葉が出てきてもおかしくはない。
『WHITESNAKE』
しかしアメリカでは不況でも、他の国とくにイギリスでは結構な上位になっているし、その他の国でも健闘しているから、ヒットに恵まれてはいないと断定するのは早計だろう。
でも、JUDAS PRIESTのほうが、いろんな国のギグで、後で出演することが多いことを踏まえれば、JUDAS PRIESTのほうが総合的には売れているからだろう。
私はWHITESNAKEが大好きなので、ツアーごとにブートを集めないことには満足しない。
それで観るも、アリーナですることもあれば、中級ホールを余儀なくされることもしばしばである。
しかし、JUDAS PRIESTのもツアーごとに集めているが、いずれもアリーナ以上が当たり前である。
それ以下の場合はみたことがない。
2003年以後の、私がいったJUDAS PRIESTの公演はいずれも日本武道館であったが、いずれもアリーナから2階席まで観客で埋め尽くしていたのだ。
日本のみならず、海外の演奏を隠し撮りしたブートや、海外のテレビで放映されたブートを観ても、いずれもアリーナでしかしていないのだ。
これはHM界の七不思議の1つといっていいだろう。
いやふざけではなく、事実ではないだろうか?
全米200万枚が最高記録なのに、どうしてこのような芸当ができるのか…と不思議であった。
『SCREAMING FOR VENGEANCE』
やはり、このバンドには、1度ファンになると誓った人には、その心を離さない魅力があるからだとしか言いようがない。
要するにアウトが少ないのだ、どのバンドのファンと比べて格段に!
それプラス、若い世代の人もファンになってしまいたくなる魅力があるのだろう。
それに、ヘヴィなもの…要するにアクの強いものはハマるのにちょっと時間がかかるが、ハマればそれに魅了されてやめたくなくなるのだ。
ヘヴィなものに魅せられた人が多いゆえに、日本で始まった『BEAST FEAST』や、それから取り次がれた『LOUD PARK』も、10年以上も続いたのだろう。
しかし、WHITESNAKEのファンはそうではなく、年を経るごとに、アルバムを出すごとにファンが漸減しているのだ。
哀しいが。
他のバンド、例えば80年代にアリーナでしていたにもかかわらず、今はクラブがせいぜいというアーティストに比べて、中級以上でできているのだから、それでもいいではないか、という意見も聞かれそうだがその通りだろう。
しかし、JUDAS PRIESTの偉業をみると、どうしてもそのようになってほしいというのが正直なところである。
80年代から90年代初頭までであれば、JUDAS PRIESTとWHITSNAKEが共演するギグだったら当然、WHITESNAKEが後の出演だろうが、今のようなブーム下、そしてアクの強いモノに魅せられてしまった大衆を前にしては、JUDAS PRIESTのほうが後の出演で当然なのだ。
しかし、ブームというのは恐ろしいものである。
ブームでないときには、それほど注目されなかったものが、ブーム下になればすごく注目されるようになるのだから。
これは、JUDAS PRIESTがブームに支えられただけの存在であるなどと言おうとしているわけではないことはお断りしないといけない。
やはり、いつまでもメタルを維持し続ける信念、ヴォーカルはもちろん他のプレイヤーの技量の高さ、そして卓越した作曲能力の高さがあったからこそ、こんにちの地位を獲得したことは間違いない。
同じくDIOも、80年代後半には、苦戦を強いられた部分があったが、JUDAS PRIESTのように、高いレベルを維持し続けてきたからこそ、2006年のHEAVEN AND HELLが結成されたときにも、各国のメタルフェスでトリを務めることになったことは間違いない。
やはり高いレベルの歌唱、演奏、作曲能力といったものを維持し続けながら、ブームの到来を待つ、ということも大事なのだろう。
私はJUDAS PRIESTとWHITESNAKE、ともにファンだ。
その理由は、共にヘヴィさを維持しているし、メロディも良好、そして往年のテクも健在だからだ。
80年代には、かなりのヘヴィさを維持していたにもかかわらず、年をとるごとにヘヴィさが希薄になり、テクも減退、良好なメロを作り出せなくなるパターンは往々にしてあるが、JUDAS PRIESTもWHITESNAKEも、それらから免れている。
ゆえにファンであることを続けているし、来日公演には必ずいっている。
しかし、なぜWHITESNAKEは80年代のようなヒットを飛ばせなくなったのかを考えるに、やはりアクの強さが足りないからだといった理由も考えられよう。
しかし、本当の着実な理由はわからない。
過去WHITESNAKEのアルバムを買っていたにもかかわらず、最近のアルバムを買わなくなった人全員に尋ねてまわり、この両者のアルバムをいろんな人に聴かせて、WHITESNAKEのアルバムを買いたくない人に、その理由をあらわにしてもらうといったいろんな方法を試すのもいいだろうが、そんなことをしている暇人や金に余裕のある人など存在しない(笑)
音楽アーティストは自分のやりたい音楽を作っていきながら、聴き手がどんな音楽を聴きたいのかを探っていくというスタンスしか望めないのだ。
それでいて、ライヴでは全身をかけて歌い、そして演奏する…こんなアティチュードしか望めないのだファンは。 そんなアティチュードを、JUDAS PRIESTにしろ、WHITESNAKEにしろ、50歳はもちろん、60歳を超え、そして70歳を迎えても維持してくれているからこそ、私はこれらのバンドのファンを維持しているのだ。
“Electric Eye” 『EPITAPH』収録
そういったアティチュードを維持してくれているがゆえに、これらのバンドのファンを維持してくれて、しかもライヴも必ず行くと決めている人も多いのだろうといえる。
JUDAS PRIESTの会場はいつもアリーナであることは先に指摘した通りだが、このバンドほどヒットに恵まれてはいないが、それでもWHITESNAKEはいろんなフェスでトリを務めているし、日本の1万数千人観客を集める『LOUD PARK』でもセカンドビルやトリを務めているのだ。
昔取った杵柄だけでは、こういう芸当は不可能だ。
それに、特筆すべきはシンガーの技量のみならず真剣さである。
ライヴになると途端に、フェイクしたり、キーを下げて歌うシンガーは多い。
しかし、ロブ.ハルフォード、デヴィッド.カヴァーデールともに、フェイクもしないし、キーはアルバムにほぼ近い。
要するに手抜きを絶対にしないのだ。
それのみか、ステージの左右によく動き、観客にマイクを向けてサビの部分を歌わせたりして、観客の心を煽る工夫は忘れない。
更にデヴィッドは、マイクスタンドを股間に立てて、手をスタンドの上から下に引き下ろした勢いで、スタンドを上に振り上げてくるくるまわしたりしてさらなる煽りをしてくれている。
また、他のミュージシャンたちもソロや伴奏を、アルバム通りに再現してくれているのだ。
“Love Ain’t No STRANGER” 『LIVE IN THE STILL OF THE NIGHT』収録
両者とも高度なテクを有する曲が多いバンドだ。
それがライヴでは困難だからと、アルバム通りの半分とか、それ以下しか再現しないプレイヤーも存在するが、この両バンドのプレイヤーたちは一切そういうことはしない。
ゆえに、それをみて感動し、何度もライヴ映像を見てしまうという結果になるのだ。
それゆえに、両バンドとも2003年以降、いろんなライヴが、オフィシャル映像になっている。
JUDAS PRIESTは、『RISING IN THE EAST』『BRITISH STEEL』『EPITAPH』『BATTLE CRY』がオフィシャル化している。
WHITESNAKEは、『LIVE IN THE STILL OF THE NIGHT』『MADE IN JAPAN』『THE PURPLE TOUR LIVE』がオフィシャル化している。
こういう例は珍しいが、それはひとえに両者とも、ライヴが素晴らしいからだ。
しかも50代以上からのライヴであるにも関わらずである。
こういうアティチュードを、いろんなバンドのミュージシャンは見習ってほしいものである。
私が、WHITESNAKEのファンを始めてこのバンドを知ってから30年以上たっているにもかかわらず、続けているのはあの『WHITESNAKE』の衝撃が絶大だったからに他ならない。
しかしそれだけで、ファンを維持し続けるのは不可能だ。
やはりヘヴィさの維持、良好なメロを作り続ける、ライヴでは手を抜かない、高度なテクのライヴでの再現…こういったことができているからこそ、それは可能なのだ。
昔取った杵柄だけでは、それは到底不可能だ。
JUDAS PRIESTも同様である。
そのバンドのシンガーが、共に51年生まれというのも奇妙な一致なのだ。
それを指摘してこのブログを終わりにしたい。
ここまで読んでいただき感謝したい。
以下、この2者の魅力が充分堪能できるアルバムを紹介したい。
●WHITESNAKEのイギリスでの単独公演を収めたデヴィッドの本領発揮のライヴモノ。
↓
●ロブのみならず、他のメンバーの実力を最大限堪能できるライヴモノ!
↓
●以下のサイトでも取り扱っています。
↓
タワーレコード
【HMV】ローチケHMV|音楽CD・DVD
今回はこれにて終了します。
ありがとうございました。