(コラム)今さらながら、ケヴィン.ムーアの魅力とは考える。そして93年当時のDREAM THEATERのフルライヴを検証する!

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最近、押入れを掃除していたら93年DREAM THEATERのブートレッグビデオを発見した。

非常に懐かしい思いがした。

そして何年かぶりで、このビデオを鑑賞した。

非常に良かった。

今は懐かし、脱退してしまったキーボーディストであるケヴィン.ムーアも参加している貴重な映像だ。

しかし、この年や前年はまさにDREAM THEATERの年といっていい。

92年に発表したIMAGES AND WORDSが『BURRN!』の新譜レビューにおいて95点を獲得し、一躍脚光を浴び、ヒットにつながった。


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IMAGES AND WORDS


それはひとえに、この作品が作曲、演奏、そして歌唱とどれもが素晴らしいからであって、レビューで高得点を取ったという単なる理由だけではないのは明白だ。

この年にも来日公演が行われたが、この年度の『BURRN!』の人気投票でアルバム部門、キーボーディスト部門、シンガー部門、TUNE部門(“Another Day”)でDREAM THEATERチャンピオンを獲得した。

そんなヒットゆえに、93年にも来日公演が実現したのだ。

1つのアルバムで2度もの来日公演が実現する例は珍しい。

昨今ではあまりにバンドの数が多すぎて到底不可能であるが、当時でも稀なことであったのは間違いない。

それまで、プログレッシヴロックは、1曲がかなり長いので一般人にはあまり受け入れられなかった。 しかし、このような偉業をDREAM THEATERが成し遂げたことで、普通の人にも門戸を開ける結果になったことは間違いないだろう。

かくいう私もその1人だ。

そして聴いた。

ものすごくよかったのだ。

特にジェイムズ.ラブリエの歌唱力の高さに。

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ジェイムズ.ラブリエ


あまりのうまさに、溜息が出るほどだったのだ。

そんな経験は初めてだった。

確かに、デヴィッド.カヴァーデールマイケル.マティアヴィッチ(STEELHEART)もかなり良かったが、溜息をもらすということはなかった。

ジェイムズにとってDREAM THEATERのシンガーとして初めての作品だったにもかかわらずこの偉業である。

前任の後釜を埋めるべく加入したシンガーだったのだ。

また、このアルバム『IMAGES AND WORDSは、8曲の収録だったが52分という長さもちょうどよかったのだ。

1曲が12分とかそういったものばかりでは、忌避されていた可能性もなきにしもあらずだっただろう。

しかし、これくらいの長さならば、誰しも受け入れられるのは間違いない。

偶然そうなったのか、バンドメンバーの意図的にだったのかはわかりかねるが、この長さになったゆえに、そしてキャッチーなメロディやリフやヴォーカルゆえに、多くの人にプログレは一般向けでないという図式を覆したのだ。

このアルバムはアメリ日本でともにゴールドディスクを獲得することになる。

そして、この93年2回目の来日公演が実現したということのみならず、ライヴビデオもライヴCDも発売されたのだ。

しかも、ビデオもCDもそれぞれ違う場所でのテイクだ。

こんな例はかなり稀有だ。



それはひとえに、ライヴがこのバンドは素晴らしいからだ。

演奏力の高さが、このバンドは並みでないし、スタジオアルバムのレコーディングのレベルとほぼ一緒なのだ。 スタジオアルバムよりはほんの若干劣りはするものの、聴き後の印象はかなりいいし、再び何度も聴きたくなるレベルだ。

しかし、昨今のバンドやアルバムの多さゆえに、こんな昔のライヴアルバムや映像がいつまでも入手可能であることは難しい。

やはり今は、2つとも廃盤になってしまっている。

だが、内容はかなりいいことは間違いない。

私は、ネットで周遊(ネットサーフィン?笑)しながらこの年のDREAM THEATERライヴモノを詮索してみた。

廃盤になっているのを知っていても、外国盤で違うヴァージョンモノが出ていることを期待してである。

すると、93年のライヴモノは、違うヴァージョンで出ていてしかも入手可能だったのだ。

そのライヴがDYING TO LIVE FOREVERである。

そしてそれをネットで注文して取り寄せて聴いた。

先に挙げた2つは、いずれもフルライヴ収録ではないのだ。

選曲から漏れた名曲があったり、ビデオクリップが入ったりと、フルライヴを望んでいる人には若干不満の出る作りだったことはまちがいないが、間違いなくこれはフルライヴだ。

しかし、このライヴは29年も前のライヴにもかかわらず、入手可能であるのは驚異的といえないだろうか?

その是非は置いておいて、特筆すべきはやはり今は脱退してしまったキーボーディストであるケヴィン.ムーアの存在だろう。


 ケヴィン.ムーア


先に92年93年はまさしくDREAM THEATERの年だったと書いたが、その立て役はケヴィン.ムーアだったことは間違いない。

最初に93年のブートを発見して、その良さに聴きいったことを書いたが、中でも集中して聴いたのは“Eve”だった。

これは『IMAGES AND WORDSに入っていないまま演奏されたインストである。

次のアルバムの初回限定パックで、このインストが8センチのCDとして付録としてついていたのだ。

ゆえにこの時は単に“Jam”という名で済ましている。

これはケヴィンの作曲であるが、スローな非常に静かなインストであるし心と脳内をクリーンに洗浄してくれるヒーリングの効果がある。




こういう癒しの効果のあるミュージックは大好きだ。


そのメロディがいつまでも脳内に残り、何度も聴きたくなることになるのだ。

しかし、こういう音楽を奏でることは誰にでもできることではない。

やはり演奏する人の心がクリーンで癒しの要素を持った人でなければできた話しではない。

ましてや、曲を作ることなどなおさらである。

その“Eve”ライヴヴァージョンを聴くのがメインの欲求で、このライヴモノを取り寄せて聴いたことを告白しよう。



このライヴは、先に紹介した国内でのライヴの映像モノであるが、これをみてもこのバンドの素晴らしさ、特にケヴィンのプレイの秀逸さが伝わってくるので、なぜ入手不可?

と思ってしまうが、昨今のアーティストの多すぎさを鑑みれば仕方ないかということだ。

この“Wait For Sleep”“Surrounded”ケヴィンによって作曲されたものだ。

他のメンバーはかかわっていない。

やはりこういう先の“Eve”にしろ、癒しのメロディがメインの曲を作ることに長けているようだケヴィンは。

だがそれだけでなく、今も名曲としてプレイされている『IMGES AND WORDS』収録のヘヴィかつオーセンティックな“Pull Me Under”にしろ、AWAKEに収録の変幻自在に曲風が変わるが1曲としてのまとまりがあり、奇想天外性のある“6;00”にしろ “Lie”にしろケヴィンがメインになって作ったものだ。

癒しのメロディだけがケヴィンの武器ではない。

しかし、ケヴィンだけでなく他のメンバーのプレイも素晴らしいゆえに、アルバムでの曲がライヴではどのように演奏されるのか、と興味深くなって聴いてしまう。

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そして、結果的にアルバム以上の素晴らしさを出している曲もままあることに気づくのだった。

私はIMAGES AND WORDS25周年を記念した完全再現のライヴにも足を運んだが、やはりあのアルバム収録のMetropolise Part 1”プログレ史上最高の楽曲だ、と思ったことをこのライヴ盤を聴いて思い出した。

やはりその意見に今も変わりはない。

原曲がアルバムでかなりいい曲だったのでライヴでも緊張して耳をそばだてて聴いてしまう。

そして、その良さを彩るのにキーボーディストの貢献度を発見できるのだ。

やはり、いい曲がなければ、そのミュージシャンの良さを知ることもできないのは明白だ。

しかし、周知のように94年に出したAWAKE発表後、彼は脱退してしまう。


AWAKE


それからしばらくして、『BURRN!』誌上で彼のインタビューがおこなわれた。

そこで知ったのは、脱退後にCHROMA KEYなるバンドを結成していた、ということであった。

その際のケヴィンDREAM THEATERからの脱退理由は、ケヴィンはオーガニックな音楽を好むが、DREAM THEATERはそこからどんどん遠ざかっていったゆえにだという。

なるほど、それは好みゆえに仕方ないし、そういった自我があるゆえにミュージシャンになるのだろうし、自我がなければミュージシャンたるものは務まらないだろう。

バンドの演奏や歌唱が巧くなればなるほどオーガニックな音楽からは遠ざかる。

楽器の音声のプロデュースやミキシングの技術のレベルが高くなればなるほどオーガニックな音楽からは遠ざかるのは間違いなし。

それは、それからのDREAM THEATERの歴史の変遷をみれば明白だしAWAKE発表後に脱退しなくとも、いずれケヴィンの脱退は明白だったろう。

いやDREAM THEATERのみならず、巧くなりプロダクションのレベルは必然的に上がっていくことは必然なわけで、その必然性が脱退の意図になってしまうとは何とも皮肉というほかない。

94年はいろんなバンドが話題作を作っては出していたこともあり、そのCHROMA KEYなるバンドは意識の片隅に置いて終わりだった。




それからしばらくして、ふとこのバンドを思い出し、このバンド名で検索をかけてみた。

その時は入手可能だったので注文したが、その後注文したサイトから品切れによる取り寄せ不可能の通知が来た。

それで断念したのだ。

更に、ケヴィンのキャリアをネットで調べてみると、彼はCHROMA KEYののちにOSIなるバンドを決成してアルバムを出していたことを知った。

これは必ず買うつもりだ。

そして好感を持てたら必ずここでレビューしたいと思っているのだ。

これだけの感動をもたらしてくれたキーボーディストなのだから。


●“Pull Me Under
  ↓





しかしネットがあるのはいいことだ。

この場合であれば、雑誌しかなかった時代であれば、CHROMA KEYのアルバムが入手可能かどうかは、CD屋に行って問い合わせるしかない。

それで入手が叶わない状態であったら、そこであきらめるほかない。

私は今も30年前BURRN!も所有しているくらいのメタル好きであるが、ケヴィンがその後どんなキャリアを踏んだかを詮索する気は起らずに終わっていただろう。



そんな大量の雑誌の中から探すのは、かなりの時間がかかるし、記憶によればその後のケヴィンのインタビューやニュースなどなかったからだ。

しかし、度忘れということも当然あるが、それでもかなりの時間を割かなくてはできた話しではないのだ。

それで詮索せずに、諦めて終わっていた可能性のほうが高い。

しかしネットがあれば、DREAM THEATERウィキペディアからPOST MEMBERの欄からリンクになっている彼の名をクリックして、キャリアを調べて、そこに出ているバンドを音楽ソフトのサイトで検索してみる。

するとそこでOSIなるバンドをしていたことを知った。

そして、そのバンドのアルバムが入手可能であることを知ることができるのだ。

これはネットの時代による恩恵の1つだ。

しかしネットの時代ではマイナス面もあることは否定できない。

YouTubeで、クリップを無料で観れる。




ゆえにわざわざCDを買わなくてもいいのだ。

それのみか、アルバムを全曲動画付きでアップする輩がいるのだ。

これは合法なのか違法なのか法律的な議論はわからない。

しかし、シングルになった曲を中心に動画がみれるのでCDが売れなくなる、ということも事実である。

しかし、同じアルバムに収められている曲を2曲くらい聴いてよかったら、そのアルバムを買うべきなのだ、そのアーティストに対するエチケットとして。

それがアーティストが生活していく上での重要な収入源になるのだから。

昨今は、アウトレットセールも音楽ソフトのサイトで定期的に開催されていて安いのだから…(笑)

私はそういうスタンスでいるのだ。

このページの先頭において、DREAM THEATER93年のブートレッグを押入れで発見して懐かしんでみたことを書いたが、そこで発見したのは、やはりケヴィン作曲の“Eve”の秀逸さである。

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あまりの身体が清涼なメロディで流される気分になるほどである。

これほどの名曲ならば、例えインストであっても、ベストアルバムに収録すべきであったと思うが、人生なかなか自分の思い通りにいかないものだ。

ベストアルバムにこの曲は収録されていない。

これはAWAKEの国内盤の発売時、初回限定のボーナストラックとして8センチのCDの大きさで別途で入っていたのは先に指摘した。

しかし、それを今更入手するのは不可能に近い。

AWAKE』からのシングルである“The Silent Man”の外国盤にも収録されていたが、それを検索したら、5000円以上の値段がAmazonでついて出されていた。

これでは、いくらDREAM THEATERのファンでも難しいだろう。

しかし、このDYING TO LIVE FOREVERにはライヴヴァージョンであるが“Eve”が収録されているし、リーズナブルな値段で入手することができる。

それのみか、全体的にもケヴィンの魅力を伝えるのにうってつけであるので、このライヴ盤はかなりお勧めである。

当時のライヴでフルで聴けるのだから。

興味を持った人には勧めたい作品だ。

しかし先に紹介したライヴモノであるIMAGES AND WORDS; LIVE IN TOKYOには収録されている“ Ytse Jam”はこのアルバムではなされていない。

これは結構スピーディなインストであるが、ケヴィンの見せ場が大いにあるのに…と残念だ。 

しかし、自分の要求がすべて通るようなアルバムはなかなかないので、そこは毅然と臨むしかないだろうし、もし自分の要求を全部入れたものが欲しいのであれば、CD-Rに編集して独自のベスト盤を作るほかないだろう。

しかし、ケヴィン最後になってしまったAWAKEには、彼の得意とする癒しの雰囲気を擁した“Space Dye‐Vest”が、『BURRN!』の人気投票のTUNE部門でノミネートされた。

それがアルバムの最後を飾る曲になったのはいある意味、神秘さをもたらしてはいないだろうか?

そんな気がしてならないのだ。

ここで何度も紹介している“Eve”が聴きたい人、彼ら史上最高のアルバム発表後のフルアルバム、ケヴィンが参加した時期のフルアルバムとして興味ある人には、このDYING TO LIVE FOREVERは超おススメである。


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今回はこれにて終了します。

ありがとうございました。

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