これはジェイムズ.ラブリエのファンには是非とも勧めたいアルバムだ。
ジェイムズは言われなくてもわかるDREAM THEATERのシンガーだ。
92年の『IMAGES & WORDS』で初めてこのバンドのアルバムに参加して以来、かなりの巧さを披露し、その素晴らしさを日本はおろか、世界中にその巧さを認識させて、多くのメタルファンの度肝を抜いた。
日本の『BURRN!』の92年度の人気投票では、いきなりチャンピオンになったのだった。
『IMAGES & WORDS』
それも当然だろう。
こんなうまい人の右に出る人を探せと言われても、全然思いつかないほどの巧さなのだから。
それから、今年で30年もたつが、それまで数々の名作をこのバンドは出してきた。
どのアルバムも出来が、他のバンドよりもあたま1つ2つ以上、上なので名アルバムを出しても、「またか」という感じで、メタルファンもたいして驚かなくなっていたのではないだろうか?
しかし、それでも私はいつしかこのバンドには疎遠になっていた。
その理由は、後述しよう。
今回紹介するジェイムズのソロ作『ELEMENTS OF PERSUATION』は、2005年に発表された。
のっけからこれまたいい意味での緊張感たっぷりの展開に感心する。
やはりこのアルバムに携わった人たちの作曲能力もさることながら、演奏力もDREAM THEATERのメンバーと同等、いやそれ以上かと時折思えるくらいのレベルの高さだ。
やはりジェイムズの実力がとてつもなく高いので、やはりそれ相応のミュージシャンでなければそのソロ作も作れなかったのだろう。
やはり類は友を呼ぶである。
このアルバムの曲は、ジェイムズとマット.ガイロリーなるキーボーディストとの共作がほとんどであるが、その作曲能力がとてつもなく高い。
こんな素晴らしい曲が作れるとは!と驚愕の思いになったが、こんなすごい芸当ができたのなら何故『BURRN!』でマット.ガイロリーなる人物を取り上げられなかったのか、と疑問に思ったのである。 また、ギターを務めているマルコ.スフォグリなる人物も凄まじい実力だ。
DREAM THEATERのジョン.ペトルーシにはない特長面もある。
ソロでは、流麗だが決してデジタリックに拘泥せず、流水のようないでたちをしたメロを炸裂させてくれる。
この人物も、マットと同様に取り上げられなかった理由がわからない。
まあ、昨今のようにアーティストの数が多すぎる時代においては、そういう弊害が起きてしまうのは致し方ないだろう。
やはり人間は誰もが保守的なので、ジェイムズのDREAM THEATERでのキャリアゆえにドラマ性を含んだ出来になっているのだ。
最初の“Crucify”からしてドラマティックに展開しているが、アクロバティックさも含んでいるので、興奮を抑えられない。
そういう曲展開は私自身大好きだ。
それが11曲目の“In Too Deep”や12曲目の“Drained”でも維持されている。
●“Drained”
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それに、時折DREAM THEATERでのリフやフレーズが散見されるが、決してパクリの曲ではない。
それがこのアルバムを作るに際して、功を奏しているのだ。
HRであろうがHMであろうが、ヘヴィさを身上としなければならない私は思うが、ここでは、ヘヴィさも充分だ。
それに打ち負けずに歌いこなすシンガーもまたいなくてはいけないが、そんなことはジェイムズには杞憂だ。
2曲目の“Alone”にしろ3曲目の“Freaks”にしろ、それまでのキャリアでは見られなかった珍しいリフも出現する。
そのメロがまた心奪われる品位を持っているのだ。
これは惹きつける枢要な武器だ!
心奪われるのは、キーボードやギターだけではなく、ジェイムズのヴォイスだ。
やはりのびやかに歌い上げるロングトーンも、ジェイムズを最初に聴いたときに惚れた面であるが、ここにきてそれを思いだしてしまった。
“Alone”においてなされているロングトーンには誰しも聴き惚れるだろう。
そのヴォイスに牽引されてか、または個人的にパッションが、このアルバムに参加しているミュージシャンは誰もが高いのかはわかりかねるが、ドラマティックな曲であるにもかかわらず、緊張感が途絶えない。
アルバムが名作という印象を与えるには、やはりレパートリーに富んだ曲があるということだろう。
冷厳な雰囲気を持ち、ミドル~スピーディの間にある“Lost”を聴いていると心が洗浄されるような気になる。
●“Lost”
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バラード調の“Smashed”もいい雰囲気だ。
夜8時以降に、高層ビル内にあるバーで夜景を見ながら聴いたら、奥ゆかしいロマンスに浸れること間違いなしと言いたくなるほどの出来だ。
また9曲目の"Slightly Out of Reach"もバラードであるが、趣きが違い、天上界にきて朝日を浴びているような錯覚に襲われる癒しの曲だ。
バラードは“Another Day”でおなじみのように、ジェイムズにはお手の物だ。
彼は何を歌わせても一級品だが。
曲調がレパートリーに富んでいるのは当然ながら、どのミュージシャンも音のプロデュースにもかなり長けていて、いろんな楽器との重ね合わせによってどのような効果が出るのかを知り尽くした感があり、曲を把握したうえで要所要所でそういう施しを調整した結果、とてつもなく良いメロディにする結果になっているのだ。
これは、料理人のような芸当を音楽でしている観になっているのだ。
やはりジェイムズの実力があったればこそ、そういうミュージシャンやプロデューサーが集まり、ただでさえ良い出来の曲がさらに昇華したような感じだ。
その演出よろしく、このアルバムは、壮大な奥ゆかしい情景を浮かばせる演出がなされている。
それは、小さなラジカセやノートパソコンで聴いても、それを堪能することはできない。
大きくなくてもいいのでコンポやステレオで聴くことをお勧めする。
そのことでラジカセやパソコンで聴くよりも何倍も魅力を味わうことができるのだ。
その状態で聴くこと=アーティストに対するエチケットだと思うのだがどうだろうか?
しかし、それだけではない。
声から発するジェイムズのソウルを、直に感じることができるのだ。
それゆえに、どうしても聴き入ってしまうのだ。
これは最近のDREAM THEATERでは感じれなかったことだ。
その音楽を聴いて、うまいな、いい曲だと思いながらもいまいち集中して聴けない。
それゆえに何年も、棚の奥にしまったまま関心の外になってしまい、いつしか中古盤屋行きやヤフオク行きの候補になってそのまま、おさらばということになってしまっていた。
そういう例は、何もジェイムズだけではなく、いろんなアーティストで経験してきたことだ。
その詳細については以下のページを読んでもらいたい。
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歌詞を書かないシンガーのバンド
http://eurokennes.blog60.fc2.com/blog-entry-576.html
http://eurokennes.blog60.fc2.com/blog-entry-580.html
やはり、歌詞は、その人の心情や思想、考えたことなどを言葉にしたものゆえに、その書いた本人でなければ、完璧に表現することはできないのだ。
それゆえに、シンガーが歌詞を書かない、書けないバンドのアルバムはいつしか聴く候補から外れて、売ることになってしまうのだ。
たとえジェイムズのような巧すぎるシンガーであっても!
そういった理由ゆえに、私はこのアルバムは、ジェイムズがかかわったアルバムとしてはかなり久しぶりに集中し、そして感動して聴いたアルバムだし、その他彼のソロアルバムは、全部集めて聴きたい気になっているのが正直なところである。
私のスタンスに共感できる人には、このアルバムはかなりの程度、お勧めしたいものである。
このアルバムは、プログレアルバムではないがゆえに、どの曲も5分から6分で収まっている。
ゆえに何度も聴きたくもなるのだ。
やはり1曲が10分以上もあるプログレ曲を続けて聴き続けるのは、一般人には難しい。
そういう特徴もまた、このアルバムを推したい理由の1つだ。
●このアルバムは以下よりどうぞ!
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