WINGERの新譜が発表とともに、今年の9月にも来日公演が決まった。
日程は以下である。
9月4日 大阪 梅田CLUB QUATRO
9月5日 東京 STREAM HALL
9月6日 東京 EX-THEATER ROPPONGI
これまで、ここ10数年においてWINGERは、来日公演はおこなってきたが、いずれも他のバンドとのドッキングばかりであった。
RATTとのドッキング、Y&TやFIREHOUSEとのドッキングをはじめ、『LOUD PARK』出演などがすべてであった。
ということは、単独公演は、93年以来、実にちょうど30年ぶりということになる。
これは驚異だ。
この告知を知って、私はすぐさま行くと決めた。
やはり、心底好きなアーティストには自然とこういうリアクションになってしまうものだ。
この時思ったのは、こういうリアクションが出なくなってしまったアーティストである。
前は好きだったが、来日の告知を聞いても、すぐには決められず、そのまま気を止めないでいたら来日公演が終わってしまっていた、なんていうことがあるアーティストは誰しもいるだろう。
あるいは、前好きだったが、行こうという反応が出なくなってそのまま見送り、というパターンもあるだろう。
その私の代表例がBON JOVIである。
BON JOVI
このバンドは、私がHRにのめりこむきっかけを作ってくれた大恩あるバンドであるが、92年以降のアルバムのどれもがどうも興奮できずじまいで、いつしかアルバムも買わず、ライヴにも行かずじまいになってしまったのだった。
アルバム発表ごとにヘヴィさが希薄になってしまい、しかも、印象に残るメロディもなくなってしまったとなれば、疎遠になってしまうのも当然だろう。
昔好きだったからということで、ライヴに行けば少しは変わるかなと思い、ライヴの告知をみる。
10000円くらいだったら、昔のなじみもあるし行こうかという気になるが、S席が15000円というのを見れば、すぐさま行かないリストに直行になってしまうのだ。
しかも、このバンドのシンガーであるジョン.ボン.ジョヴィはライヴではキーを下げて歌うし、フェイクの数も多いのだ。
それもライヴに行きたくない理由になってしまっているのだ。
にもかかわらず、来日公演が決まればドーム公演が当たり前。
どうして昔のファンがいまだに行き続けるのか私には理解ができかねるのだ。
しかし、かたやWINGERはどうなのか?
確かにこのバンドも、90年代のようなヒットは出ていない。
しかし、ヘヴィさは維持しているし、すくなくなったとはいえ、印象に残るメロディやリフはアルバムには散見される。
しかし、最新アルバムである『SEVEN』には、90年代のこのバンドのような煌びやかさやロマンティックさは後退しているのは否めない事実だ。
『SEVEN』
ギターは、GコードやB7やB6を多用するリフが多く、この音域ではそういった煌びやかさを演出するには不向きな音域なのだ。
やはり、このバンドがその良さを最大限引き出したアルバムは『WINGER』(88年)や『IN THE HEART OF THE YOUNG』(90年)だろう。
そこから出される爽やかさは、晴れの日に聞いたらさぞかし元気になるだろうし、キーボードやSEを使用した曲は夜にはこの上なくロマンティックな気分になることは必至なのだ。
前者では“Can't Get Enough”が好例で、後者は“Headed For A Hertbreak”や“Under One Condition”が好例だろう。
“Headed For A Heartbreak” 『WINGER 』より
それでどれだけファンになった人が多いことだろうか?
それでいい気分になれた人は、どうしても次のアルバムでも、その次のアルバムでも、そういう像を期待してしまうのだ。
『IN THE HEART OF THE YOUNG』
しかし、そういった面が後退してしまっては、ファンとしては哀しい限りなのだ。
高校生や中学生であれば、少ない小遣いでCDを買って聴くのだから、全然感動できないアルバムでは、落胆の度合いは大きい。
そのよくなかったアルバムの特集を雑誌で取り上げられては、うんうんと唸ってしまう。
その傑作でないアルバムが、1枚だけでも大ヒットを出さずに、ヒットどまりのアーティストでは命とりになるし、それが2枚3枚と続いていれば、もうそっぽを向かれてしまうのは当然だ。
私は、雑誌や世間でどういわれようが、自分でいいと思ったものに関しては、全然気にしない。
確かにそういう部分はあるしとか、その意見は頷けるけれど、といった程度で終わってしまう。
ならWINGERはどうなのか?
WINGER 91
2006年の『Ⅳ』にしろ、2009年の『KARMA』にしろ、往年の煌びやかさはないがそれなりにいい出来だ、という意見だ。
今回の『SEVEN』は、ヘヴィなリフが多く、メロディのチェンジが少ない。
しかし、もっと往年の煌びやかさを、と思っていると、アコースティックギターで曲を転換したり、SEを用いて深淵な雰囲気を演出したりする。
そのままの展開で、と思っているとそれほどのはなく、そのまま終わってしまうのが残念なところだ。
しかし、それが聴き続けたい演出になっているので、それが魅力として印象付ける結果になるのだ。
“Proud Desperade” 最新アルバム『SEVEN』より
そういう音程が続くだけで一向に曲が変更しないメタルバンドーHRとカテゴライズされない‐のアルバムは聴き続ける気にならないので、ヤフオク等で売ってきたのだ。
しかし、『BETTER DAYS COMIN'』は素晴らしい出来だった。
心底、「このアルバムの完全再現ライヴをやってほしい!」と思ったほどだ。
今回のアルバムは、その延長線で行ってほしいと思ったが、そうはならなかったようだ。
願わくば、『WINGER』や『IN THE HEART OF THE YOUNG』のように、と願いたいが、当時20代だったメンバーに当時のような若々しさや恋愛心や、遊び心を維持しろ、というのは難しい要求なのかもしれないが、そういう往年の良さを復活させたパターンはある。
それがRATTの『INFESTATION』だ。
『INFESTATION』
しかし、『Ⅳ』にしろ、『KARMA』にしろ、今はサイトによって若干違うが廃盤か入手困難になっている。
バンド初のライヴ映像である『LIVE !』は廃盤だ。
『BETTER DAYS COMIN'』は一応サイトによって入手は可能だが、廃盤扱いになってしまっているパターンもある。
しかし、『WINGER』にしろ『IN THE HEART OF THE YOUNG』にしろ、どのサイトでも入手可能なのだ。
やはり両者とも出来が素晴らしいからだ。
それが今でも人によって語り継がれている場面が多々あるのだろう。
しかし皮肉にも、メンバーはあれらのアルバムの全体を無批判でいるわけではないようだ。
ポップでメロディアスの部分を、あれらのプロデュースを担当したボー.ヒルが強調しすぎてしまったのだという。
ボー.ヒル
そのためにキーボードを入れすぎたということだ。
それで、93年にはグランジの時代が来た。
そこで、プロデューサにボーを起用せず、その手法も取らずにヘヴィさを強調した出来にした。
それが『PULL』アルバムだ。
しかしそれは、バンド史上初のゴールドにも届かないセールで終わってしまったのだ。
前の2作はともにプラチナを獲得したが。
『PULL』
にもかかわらず、ボーの手掛けたファーストやセカンドの偉業については語らずじまいだったのだ。
これは片手落ちの言論といわざるを得ない。
しかし、その失敗に凝りて、またボーを起用するかと思いきやそうはならず、次もその次も他のプロデューサーに頼んで自分たちの作りたいアルバムをつくり続けている。
やはりヒットを1度か2度作ってしまえば、それゆえに、それらのアルバムが売れ続け、それによって自分たちの作りたいアルバムを出し続けることになってしまうようだ。
それが吉とでるか凶と出るかはお構いなくにだ。
やはり世界で通用する言語である英語で歌われて、しかもヒットをしたとなれば、それが半永久的に語り続けられて、世界で売れ続ける。
それでレコード会社は文句を言えずに、アーティストの作りたいアルバムを出し続けることになる。
売れるか売れないかはあまり問いにされている様子はない。
しかし、それではファンは哀しいだろうし、折角期待してアルバムを買うのに…と思わざるを得ない。 その好例がイングヴェイ.マルムスティーンだろう。
イングヴェイ.マルムスティーン
この人のデビューから94年までのアルバムは、心底素晴らしい出来と思うが、それ以降はプレイに冴えもなく、作詞作曲も自分ひとりでやって、やりたいようにしすぎて、暴走しているだけという印象が強く全然聴けない代物になっている。
しかし、デビューから94年までのアルバムは素晴らしい出来ゆえに、いまだ売れ続けているがゆえに、アルバムは出せても彼のやりたいアルバム、しかもあまり聴けないアルバムを出し続けている。
しかし、もう聴けないと断定しているので私には彼のアルバムは関心の外になってしまっている。
しかし、WINGERは民主的なバンドであり、リーダーのキップ.ウィンガーがイニシアティブを握っていても、他のメンバーが作詞作曲に参加している。
それゆえにあまりに偏ったアルバムになる事態にはなっていないで済んでいる。
やはり要所要所で歯止めは必須なのだ。
その歯止めが今のイングヴェイにはないのだ。
しかし、WINGERのライヴはいいし、中古盤屋等に売りたくなったアルバムはない、ということで私はファンでい続けているし、来日公演の告知をされるとすぐさま行きたくなってしまうのだ。
『LOUD PARK 17』においても、このバンドが次の出演になった時には、すぐさまステージの前にまで走っていったのだ。
今回の『SEVEN』をどう評価するかは、人によって違ってくるだろう。
その内容を確認したい人は買って聴いてみるのがいいだろう。
やはり、そのアルバムの良さについて決めるのは聴いた本人自身なのだから。
往年のようなヒットがないにもかかわらず、1000人規模の会場でできるのだから天晴というほかないし、これまでのアルバムや最新アルバムが売れているからだろう。
以下よりどうぞ!
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今回はこれにて終了します。
ありがとうございました。
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