今回も、トニー.ハーネルのバンドについて紹介したい。
この人は、驚異的なヴォイスを持つシンガーであり、作詞作曲もそつなくこなす、ミュージシャンとしての理想的な像を体現している人だ。
トニー.ハーネル
いくら歌が上手くても、作詞ができないのでは話しにならない、と私は正直思っている。
他人が書いた歌詞をいくら上手く歌っていても、その歌詞は他人が書いたものであってみれば、そこに自分の経験や思いから抽出された言葉ではないがゆえに、自分の感情を込めることなど不可能だからだ。
ゆえに、自分で歌詞が書けるシンガーでなければ、感情が感じられず、ゆえに感動できず、いつしか疎遠になってしまい、そのCDは中古盤屋に売るということを何十と繰り返してきたのだ。
ゆえに、私は歌詞を自分で書いているシンガーのいるバンドこそ応援し、そのアルバムを買い続けたいと思っているのだ。
そのトニー.ハーネルのTNT以外のバンドとしてLOVE KILLERSを紹介したい。
このアルバムは2019年に発表された。
このプロジェクトでは、アレッサンドロ.デル.ヴェッキオと組んでバンドを結成したようだ。
このアレッサンドロ.デル.ヴェッキオはEDGE OF FOREVER、HARDLINE、LIONVILLE、REVOLUTION SAINTS、その他いろんなバンドで、プロデューサーやソングライティングやキーボーディストといったそれぞれ違うスタンスで様々な仕事をしてきた人物だ。
アレッサンドロ.デル.ヴェッキオ
こういった様々なバンドから声がかかるということは、かなりの実力者なのだということがわかろうというものだ。
このLOVE KILLERSでの仕事が素晴らしければ、他の関わったバンドのも聴いてみよう、そんな気持ちでこのアルバムに臨んだのだ。
どのような合意に達したかはわかりかねるが、このバンドは思っていた通り、トニーとアレッサンドロとの共作がほとんどを占めている。
それが功を奏して、エモーショナルな味のあるアルバムに仕上がっている。
のっけの“Alive Again”はスピーディな曲だが、ヘヴィさも申し分ない。
『LOUD PARK』にも出演しても、力負けしない程のものだ。
ギタリストであるジァンルカ.フェロという人物もそのテクに申し分ない。
TNTのギタリストであるロニー.ルテクロはかなり凄腕だが、それに甲乙つけがたいほどの緩急のつけ方が上手いのだ。
そんなことを考えていると次の“Huricane”につながったが、これが「TNTの曲?」と錯覚してしまうほどの、TNTの“Intuition”そっくりの雰囲気の曲で、80年代にタイムスリップしたのか、と一瞬思ってしまったほどだ。
TNT
しかし、その年代からは20年を隔てて作られたアルバムにもかかわらず、気負いが感じれないし、曲を活かすトニーやその他メンバーは素晴らしい。
センスもぴったりと他のメンバーと一致していると感じるのは私だけではないだろう。
次の“Ball And Chain”は、メタルバンドにも力負けしない、凌駕するほどの力強いギターリフが印象的で、ハードロック特有のメロディアスさが要所で光り輝いている印象をこの曲では受ける。
そのギターの味が次のバラード曲である“Who Can We Run To”でかなりの程度、昇華させている。
●“Higher Again”
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宇宙空間にいるような錯覚をもたらすキーボード音で始まる“Higher Again”は印象的だ。
この曲から受ける印象と、曲名がピッタリ合っている。
こういう曲こそがTNTの最大の魅力であったはずだ。
それを、別のバンドでも体現してくれるからTNTのファンには是非とも聴いてほしいアルバムになってしまう。
歌メロも、TNTの全盛期を思い起こすほどの力を維持しているから嬉しくなるのだ。
世の中が不況でどんよりした心境では、こんな曲は作れないが、なにかトニーの心に良作用を起こすようなことが起きたのだろうかと不思議に思ってしまうほどだ。
やはり、類友ゆえに、あの音楽性と一致するミュージシャンが自然と集まったのだろうか?
あの当時の80年代後半のハードロックをこよなく愛したミュージシャンが最高の曲群を作り演奏してくれているかの印象を受けてしまうのだ。
特にギターに関してはそう思ってしまう。
あの当時を懐かしんで、あの当時の音を再現するバンドがいくつか出てきてはいたが、それほど話題にはならなかったが、このバンドに関しては、そんな要求を全て受け入れてくれるバンドであると、保証したくなってしまうのだ。
中学生や高校生、大学生は夜に勉強する。
その時の息抜きで音楽を聴く。
その時、ロマンティックな気分を醸成してくれるバラードを聴くと何とも言えない気分になる。
私もそんなときに聴いたバラードはいつまでも最高の思い出となって心に残っている。
そんな効用を持つバラード曲として次の“Across The Ocean”を挙げたい。
それは、プロデュースと作曲力と演奏力が高くなければそれをかなえることは出来ないのは言うまでもないが。
ハードロックバンドにしかできない繊細さがいろんなところで聴けるのだ。
次の“Bring Me Back”もそんな繊細さが活きたバラード調の曲だ。
その繊細さを活かしているのがギタリストのジァンルカの腕だ。
緩急のつけ方が見事なのだ。
高音のロングトーンで伸ばすところはしっかり伸ばし、曲を彩る場面では抑えるというメリハリがいいのだ。
ジァンルカ.フェロ
時間があったらこの人について調べてキャリアに興味が持てたら、そのCDも買って聴いてみたいものだ。
またお金がいくらあっても足りない…(笑)。
次の“Now Or Ever”もTNT色たっぷりだ。 だからと言って亜流ではない。
LOVE KILLERとしての味を前面に出しながら、一定のヘヴィさが出ている。
次の“Heavily Broken”も佳曲だ。
ヨーロピアン色のあるキーボードのフレーズで始まるが、その音色を聴いていると昼間から夕焼けの中間の時間帯にヨーロッパの神殿を見ているような気分にさせてくれるのがいいところだ。
トニーはマグナス.カールソン(スウェーデン人)とSTARBREAKERを結成し、アルバムを出したが、その時もヨーロッパ人ならではの雰囲気を醸し出していた。
そういう特色こそ、そのバンドの強みになるのは間違いない。
ただし、そのミュージシャンに作曲力や演奏力で確固たる力量がなくては話しにならないが…ってかなり偉そうだが(笑)。
●“No More Love”
↓
次の“No More Love”では、そのギタリストとしての力量が存分なく発揮されている。
最後を飾る“Set Me Free”は、トニーの真骨頂が垣間見れるバラードだ。
どんな曲も素晴らしい歌唱を聴かせてくれるが、バラードこそが彼の最大の見せ所と思うのは私だけではないだろう。
やさしい人間性がにじみ出てくる味を感じるのだ。
その声を彩るピアノもアコースティックギターの音色もやさしい繊細さを醸し出している。
2人の心を映しだしているかのようだ。
大満足のうちにこのCDは終えることになるのは間違いない。
このCDはトニーのファン、TNTのファン、ヨーロピアンバンドのファン、繊細さの味が好きな音楽ファンには是非とも聴いてほしい代物だ。
これを聴かずして、メロディアス系を語るべからずといいたくなるほどだ。
日本盤には“Bring Me Back”のアコースティックヴァージョンをボーナス収録されている。
恒常的なバンドではなく、一時的なプロジェクトという色彩が強いバンドのアルバムは、ちょっと経っただけですぐ生産中止や廃盤になりやすい。
そういう経験を私は何度もしてきた。
そうなる前に購入をすることをお勧めしたい。
●このアルバムは以下よりどうぞ!
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●以下のサイトでも取り扱っています。
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タワーレコード
【HMV】ローチケHMV|音楽CD・DVD
今回はこれにて終了します。
ありがとうございました。
♯Tony.harnell
♯lovekillers
♯TNT
♯アレッサンドロ.デル.ヴェッキオ
♯ジャンルカ.フェロ