(コラム)Yngwayをやめればイングヴェイ.マルムスティーンは再び傑作を出すことができる?

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繰り返すようだが、イングヴェイ.マルムスティー最高傑作94年発表のSEVENTH SIGNだ。

良い曲しか入ってないし、心底人様に薦めたい作品だ。

スピーディ、ミドル、バラードとレパートリーに富んでいて、聴き手を飽きさせることが全くない。


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SEVENTH SIGN


これまでの彼の作品は、84年RISING FORCEからして素晴らしいが、それ以降のアルバム作品も全部よかったのだ。

ゆえに、この人は永遠に佳作を作り続けるのだろうと予想していた。

これまでのHRの歴史を俯瞰すると、彼のような速弾きをこなすアーティストは、80年代にはもてはやされたが、今はそうではないし、それ以前でも以後でも、そんなに人気を博することはできないのがわかった。

ギンギンの速弾きよりも、速弾きでない手なりのソロの方がウケやすい。

アルバムとシングル合わせて全世界で3億枚を売ったLED ZEPPELINにしろ、2億枚を売ったAC/ DCにしろ、1億5千枚を売ったAEROSMITHにしろ、どれも手なりのソロだ。

ギンギンの速弾きソロをしているアーティストで1億枚以上を売ったのはBON JOVIMETALLICAくらいのものだろう。

全体的に、手なりのソロをしている方がウケやすい。

それは、ギターを手に取って、コピーしやすいからだ。

コピーできる曲が増えれば増えるほど、そのアーティストとの心の距離は近くなって、ますますそのアーティストが好きになる。

逆に、難しい速弾きでは、なかなかコピーできず、そのうちコピーするのを諦め、アーティストとの距離は遠くなって、アルバムを買うことも少なくなり、公演にも足を運ばなくなるのは必然だ。

また、ドラマ性を有した曲や、オーケストレーションを導入した曲などもコピーするには展開が難しいから、こういったバンドも敬遠されがちになる。

それでも、私は敢然と速弾きの演奏をするギタリストの方を選ぶし、速弾きがないギタリストのプレイを聴いてもほとんど感動しない。

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AC/DCAEROSMITHよりも、正直イングヴェイの方が好きだし感動する。

これは神に誓って言える! 普通のロックやAORから音楽にはいった私だが、途中でHRにのめりこむようになってから、それらの音楽にはほとんど興味を見出せなくなったのは、そういう理由になる。


お勧めアルバム!
THE SEVENTH SIGN(新価格盤)


しかし、95年発表のMAGNUM OPUSから陰りが見え始めて、99年ALCHEMYから20年以上、全然聴きごたえのある作品がなく、アルバムCDを買っては3回くらい聴いては、それだけでいつしか疎遠になり、果てには中古盤屋ヤフオク!といったところへ売ることばかりが続いていたのだ。

起死回生の作品を作ってくれるだろうと期待しているのだが、全くその兆しは見えてこない。

SEVENTH SIGNがあまりに素晴らしすぎて、その二番煎じでもいいから出してほしいと思っていた。

周知のように、このアルバムで歌っているマイク.ヴェセーラは次のMAGNUM OPUSでは歌っていたが、当時のイングヴェイの妻と不倫をしていたことが発覚して、当然クビになった。

マイクについてイングヴェイは「あいつと永遠に仕事をしていたい。」と語っていたのだが、そんなことをしていては…(笑)。

後に97年あたりからいろんなアーティストが、ライヴでアルバム1枚を完全再現する企画をしだした。 その際に選択されるアルバムは、そのバンドの最高傑作が普通だった。

どのアーティストもそうだった。

ならば、イングヴェイにもSEVENTH SIGNの完全再現をしてほしかったのだった。

イングヴェイは、LOUD PARK 13』トリとして出演した(トリのKING DIAMONDが急遽これなくなったので繰り上げでイングヴェイがなった)が、その際は演奏した曲の殆どがインストルメンタルだったのだ。


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  『LOUD PARK 13』


そんなことをしては、イングヴェイの熱烈はファンでも、退屈するだろうと思うだろう。

そのことについても、我気にせずといった感じだった。

まさにイングウェイ(Yngway)だ…(笑)

そんなことをするのであれば、SEVENTH SIGNの完全再現をしてくれた方が全然ましだったに違いない。

彼の人気は年々落ちていく途上にあったし、ここで最高傑作の完全再現をすれば、彼の最高アルバムをこれまでの世代ではない人たちにもアピールできたことは間違いない。

それなのに…。

“Crash and Burn” 『SEVENTH SIGN』収録の曲 映像は『LIVE AT BUDOKAN』より


その最高傑作を出した後にも、日本武道館公演が実現し、その映像を収めたライヴビデオも発売された。

その模様を鑑賞するに、とびきり興奮するのは間違いない。

最高傑作アルバムからの曲は多数演奏されているし、最高傑作でファンの気が舞い上がっているところでは、イングヴェイの心も浮き上がり、オーラを発散しているし、過去の名曲も演奏されれば、その名曲もさらに盛り上がる。

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そして、彼の魅力に更に耽溺するようになる。

こんな好循環はないだろう。


この時のライヴdvd!
Live in Budokon [DVD] [Import]


彼のデビューから、この作品まで捨て曲もなければ、捨てアルバムもないのだから、これから先も傑作アルバムを出し続けるだろうと誰もが思っただろうし、かくいう私がそうだった。

しかし、その後はどうだったろうか?

残念ながら駄作アルバムの続きだ。

気が乗らないときに聴くといい曲もいいと思えないときがあるので、私は最低でも3回は聴くようにするのだ。

それでも、ALCHEMY以降のアルバムはどれも再度聴きたくなる代物ではなかった。

オーケストラとの共演モノが映像として出たが、あれはイングヴェイの魅力を別の手段で聴けて、違う味で楽しめたのは良かったが…。



魅力が感じれなくなった理由を分析すると、やはり2つに集約される。

1つは過度のセルフプロデュースによる、瑕疵の見落としだ。

彼が、作曲を全部の曲でするのみならずプロデュースまでしてしまうのだ。

それによって他の人が介入して、欠点を指摘することがないまま、作品が出来上がってしまっているのだ。

こうすればいい、ああすればいいということを指摘されて矯正すればいいものを、それがないままアルバムが出来上がってしまっている。

これでは、いい作品ができるわけがない。

バンドを続けていって佳作のアルバムを出し続けている場合、例外なくバンドメンバーたち複数で曲を作っているのがわかる。

バンドのリーダー1人だけで作っていることはない。


それによって瑕疵が矯正されるからだ。

もちろん例外はあるが。

理由のもう1つは、イングヴェイが曲のみならず、歌詞まで1人で書いてしまっていることだ。

シンガーが他の人間が書いた詞を歌っても、そこにはハートも感じなければ、ソウルも感じれない。

ゆえに、私は、いくら曲の出来が良くて、演奏もうまく、歌もうまいバンドでも、シンガーが作詞をしないバンドのCDはいつしか疎遠になり、中古盤屋に売るということを何度もしてきたのだ。

他の人の書いた詞には、書いた人の感情や主張が入っている。

それを、シンガーが完全に感情移入することなどできた話しではない。

ゆえに、シンガーが歌詞を書かないものには感動ができずにここまで来たのだ。

バンド内の事情である中心人物が作詞作曲を担当することが暗黙の了解で決まっており、シンガーが作詞を担当できないというパターンもあれば、単にシンガーに作詞能力がない、というパターンもある。

前者の例が、DANGER DANGER、ROYAL HUNTSKID ROWNIGHTWISH、MESHUGGAH、MOTLEY CRUEといったバンドになる。

こと後者の例はTHUNDERFAIR WARNINGになる。 英語圏で生まれ育ったか否か、といったことはあまり、というか全然関係ないとしか私には思えない。

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現に、クラウス.マイネ(SCORPIONS)、ジョーイ.テンペスト(EUROPE)、ヴィレ.ヴァロ(ex HIM)、イーサーン(EMPEROR)、ロニー.アトキンス(PRETTY MAIDS)、クリスティーナ.スカビア(LACUNA COIL)、シャロン.デン.アデル(WITHIN TEMPTATION)といった非英語圏のシンガーの歌にはかなり感動させてもらった経験がある。

英語圏のシンガーでも、自分で歌詞を書けば自然と感情をこめれるのだ。

その感情が聴き手に感動を喚起するのだ。

マイク.ヴェセーラが、イングヴェイのバンドに加入していた時期は、マイクが収録曲の半分以上で歌詞を書いていた。

それが結果として、楽曲に感動できる代物に変えていたのだった。


しかし、98年FACING THE ANIMAL以降は、ほとんど全部イングヴェイが歌詞を書くようになってしまったのだ。 ゆえに、イングヴェイの楽曲には感動できなくなってしまったのだった。

シンガーが歌詞を書かない曲やアルバムはいつしか疎遠になり、そのアルバムを売るということをこれまでしてきたのだ私は。

ゆえに、98年以降のアルバムはほとんど聴かないままオサラバということになってしまっていた。

そのスタンスをこれからもイングヴェイは変えないのだろうか?

答えはわからない。


“Bedroom Eyes” 『ECLIPSE』収録



以下、興味深いデータを提示したい。

BON JOVI  ランス.クイン→ブルース.フェアバン
EUROPE  リーフ.マセズ→ケヴィン.ウィルソン 
WHITESNAKE  マーティン.バーチ→キース.オルセン、マイク.ストーン

これは何を意味するだろうか?

これらは、これまでのプロデューサーを代えて、別のプロデューサーに変えることで、これまでほとんどヒットに恵まれていなかったアーティストが、大ヒットを飛ばすことになったというデータである。

BON JOVIは、それまでランス.クインをプロデューサーにしていたが、SLIPPERY WHEN WETを制作するに際し、ブルース.フェアバンに変えることで大ヒットを飛ばすことに成功したということだ。


スリッペリーウェンウェット
SLIPPERY WHEN WET


前作の『7800 FAHRENHEIT全米50万枚のセールだったが、SLIPPERY WHEN WET1300万枚と大飛躍したのだ。

EUROPETHE FINAL COUNTDOWNを制作するに際して、リーフ.マセズのプロデュースを離れて、ケヴィン.ウィルソンに委託した。

それまで50万枚も売れなかったEUROPEが、いきなり300万枚を売ったのだ。


ファイナルカウントダウン
THE FINAL COUNTDOWN


のみならず、シングル曲の“The Final Countdown”は、世界25か国首位を獲得するに至ったのだった。

WHITESNAKEは、それまでプロデューサーをマーティン.バーチにしていたが、WHITESNAKE』アルバムの際には、キース.オルセンマイク.ストーンに変えた。

そのことで、アルバムは全米だけで800万枚を売る結果になったのだった。

前作は50万枚だったが。


白蛇の紋章
WHITESNAKE


このように、作曲や作詞のみならず、プロデュースにおいても、人を替えることで、大きな飛躍をもたらすことが往々にしてあるということだ。

私の趣味は論文の本の読書だが、ある著者の本を読んでつまらないなと思ったら、その著者の他の本は読まないことにしている。

筆致や論理づけや、モラルなど、何年、何十年とたっても変わらないからだ。

引用ばかりの本を書いている人は、後にも先にも引用ばかりの本を書いているので、読むに値しない。

何百人もの著者の本を読書をしてきて、これからも読みたい本のチェックをしてリスト作りをいるので、一度ダメ出した著者の本をつかまないように、これから先読まないように、NG著作家のリストを作り、その先において、ネットや目録などをチェックしていて、読みたい題名の本が出てきたときに、そのNGリストに入っている著作家のだったらお金を無駄にするので、買わないようにしているのだ。

しかし、こと音楽アーティストはそうはいかない。 当初そんな良くないなと思ったアーティストでも、何年か後に、とても素晴らしいアルバムを出したりするのだ。

特にEUROPEWHITESNAKEは最たる例だ。

それだから音楽は厄介であると同時に、嬉しいカウンターパンチを秘めているのだ(笑)

この例からもわかるように、イングヴェイのセルフオーバープロデュースも辞めて、また民主的なバンド形式…とまではいかなくとも、歌詞をシンガーに書いてもらい、プロデュースも他人に任せるようにしたらどうかと思えてならないのだ。

そのことで、新しいヒントやインスピレーションを得ることができて、きっといい作品ができると思ってやまないのだ。

かつて、民主的なバンドであったALCATRAZZに属していた時期がイングヴェイにはあるが、そのALCATRAZZには、現在、かつて自分のバンドに属していたドゥギー.ホワイトがいて、ギタリストはジョー.スタンプが加入している。



ジョー.スタンプ(ALCATRAZZ)


そのジョーは、イングヴェイをモチーフにしたネオクラシカルなフレーズを多用したプレイをしている。

しかも、当のイングヴェイよりも、プレイには冴えがある。

そして、ドゥギーイングヴェイのバンドでは一切歌詞を書かせてもらえなかったが、このALCATRAZZでは、全部の歌詞を書いている。

勿論、作曲はジョーがしている。



ドゥギー.ホワイト(ALCATRAZZ)


民主的でかつ、シンガーが歌詞を書いている。

これがバンドの理想的な姿だろう。


その理想を体現してくれるようでなくては、そのバンドのミュージックに感動できないままだ。

その理想のバンドを体現しているバンドであるALCATRAZZが、かつての自分のバンドのシンガーであり、自分の音楽をモチーフにしているギタリストで固められているというのは皮肉だろうか?

こういうスタンスでいてくれないならば、私はイングヴェイを応援する気にはなれない。

逆にALCATRAZZを大幅に応援するだろう。

それに異言はないし、変えるつもりはなく、過去の名作アルバムだけを堪能させてもらいたい。

本当に繰り返しになるが、イングヴェイ.マルムスティー最高傑作SEVENTH SIGNだ。

これの再来を待っているのだが、その実現のためには、セルフ.オーバー.プロデュースをやめ、作詞をシンガーに委託することだ。

でなければ感動できる作品はこれからもできないだろう。

そのSEVENTH SIGNの収録曲は以下だ。
(収録曲)
1. ネヴァー・ダイ
2. アイ・ドント・ノウ
3. メント・トゥ・ビー
4. フォーエヴァー・ワン
5. ヘアトリガー
6. ブラザーズ 7. セヴンス・サイン
8. バッド・ブラッド
9. プリズナー・オブ・ユア・ラヴ
10. ピラミッド・オブ・キーオプス
11. クラッシュ・アンド・バーン
12. ソロウ
13. エンジェル・イン・ヒート


ここで書いてきたことに嘘は一切ない。

ゆえに、SEVENTH SIGNは最大限勧めたいのだ。

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今回はこれにて終了します。

ありがとうございました。

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イングヴェイ.マルムスティーン ♯『SEVENTH SIGN