EXTREMEの人気健在なり!
そんな声が聞こえても不思議ではない。
きたる今年の来日公演は、東京公演に追加公演が決定し、それもすぐにソールドアウトになり、再追加公演が決定されたのだ。
会場はいずれも中級ホールゆえに驚嘆すべき事項だろう。
今回の公演日程は以下。
9月17日(日) SENDAI GIGS (売り切れ)
9月19日(火) KT Zepp Yokohama
9月21日(木) 昭和女子大学 人見記念講堂
9月22日(金) 昭和女子大学 人見記念講堂(売り切れ)
9月25日(月) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(売り切れ)
9月26日(火) Zepp Namba
9月27日(水) Zepp Haneda
これだけの規模でできるハードロックアーティストがほかにいるだろうか?
過去、このバンドは90年発表の『PORNOGRAFITTI』が全米で200万枚を売り、いきなりスターダムに乗り上げる勢いを得たのだ。
『PORNOGRAFITTI』
その時の公演も、追加公演が中級ホールでの開催だったことを考えれば、その健在さを見る気がする。
しかし、90年から92年までに、不思議な現象が起きて、EXTREMEの『PORNOGRAFITTI』と、FIREHOUSEの『FIREHOUSE』の2アルバムが、それぞれの次のアルバムが発表されるまで、日本でのHR/HMチャートのトップ30位以内にずっとランクインし続けたのだ。
その原因は今もってよくわからないのだ。
そんな偉業を成し遂げたがゆえに、92年のEXTREMEの来日公演は日本武道館で2日間が決定したのだ。
これは素晴らしい!
次のアルバムはこれほど売れなかったが、それでも全米で70万枚を売ったのだ。
それゆえに94年のイギリスでの『MONSTERS OF ROCK』で、トリのAEROSMITHにつぐセカンドビルに抜擢されたのだ。
『MONSTERS OF ROCK 94』
こういった昔取った杵柄的なニュアンスだけで、30年以上も人気を維持できるはずはない。
昔取った杵柄だけで、これだけの人気を維持できるのは、ミリオンセラーをあげれたアーティストだけである。
しかし、EXTREMEは、それほどの売り上げは達していない。
ならば、この維持の秘訣は、最新アルバムの質の良さしかない。
最新アルバムである『SIX』はすばらしい出来だ。
よくもこれだけの出来のアルバムを作ってくれたと嬉しさがこみ上げる出来だ、それは保証する。
パッションがあるかないかは、聴けばすぐにわかる。
それがアルバム全体にいきわたっている感じだ。
しかし、あの『PORNOGRAFITTI』のようなファンキーな音楽性は後退している。
そのアーティストのヒット作の音楽性は、その時の一過性で終わる場合もあれば、そのままそのバンドのアイデンティティにしていくかがわかれるが、それはアーティストの自由ということだ。
私は、どちらでもいいと思うのだ。
ただし、その後のアルバムが、すばらしい出来であればの話しであるが。
印象的だったのは、91年の『BURRN!』のインタビューで、このバンドのメインソングライターの1人であるヌーノ.ベッテンコートが、「いつまでも変わった音楽を作り続けたいね。」と語っていたのを思いだす。
それは、このバンドのデビュー作と次の『PORNOGRAFITTI』での変遷を見れば明白だ。
しかし、その『PORNOGRAFITTI』から次の『THREE SIDES TO EVERY STORY』や『WAITING FOR A PUNCHLINE』での変遷では佳曲の減少があったがゆえに、批判の対象になってしまったのだった。
それによってヌーノは、「昔からずっと変化してきたのに、そんな批判を受けるのはおかしい」という発言をしていたが、それは単に変化への批判ということではなくて、佳曲の減少ということに眼目を置いてほしかったのだ。
例え売れなくても自分で聴いていいと思えれば、その良さをこういう場で表明してきたが、その『THREE SIDES TO EVERY STORY』や『WAITING FOR A PUNCHLINE』については、その良さを見つけるほど真摯に向き合って聴いていないので、それができたら表明したいと思っている。
因みにだが、『WAITING FOR A PUNCHLINE』発表後の来日公演でも1日だが日本武道館でやったのだ。
しかし、その後、ヌーノがソロ作を出すも、注目されずじまい、売れずじまいになり、にっちもさっちもいかなくなりバンドへの情熱を失ってしまっていた。
そして、一度このバンドは解散する。
その後、2008年に再結成する。
そして、『THREE SIZE TO EVERY STORY』や『PORNOGRAFITTI』の完全再現のライヴを日本を含めた各国でおこなってきた。
日本でのライヴはいずれも中級ホールでの開催だったので、その人気の根強さを垣間見た気がする。
そして2023年のいまだに、そのレベルを維持できているから脅威というほかないのだ。
このような維持のでき方を見れば、その秘訣はヒット作の音楽性の維持ではなく、佳曲の連発だということが言えるのではないだろうか?
そんな気がするし、今作の『SIX』を聴いても、そんな思いが去来するのは私だけではないだろう。
やはり『PORNOGRAFITTI』の踏襲ではないのだ。
あのアルバムの再来を期待しているだけであれば、今作は聴かない方がいいだろう。
アルバムを1枚聴いた後に「また聴きたい!」と思われる要素があればそれでいいのだ。
上手い歌、テクニカルでパッショナブルな演奏に引き込まれる感じ、といった方がいいだろう。
このアルバムは、“Rise”で始まる。
この曲の中盤あたりではサビでおちゃらけた感じを受けるが、全体で聴けば真摯なアティチュードが根幹としてあるのがわかるだろう。
そしてヌーノ特有のフレーズが今でも生きているテクニカルなソロを聴いていると嬉しくなる。
『PORNOGRAFITTI』収録の“Lil' Jack Horny”で見せた、フレーズがいまだ健在だ。
しかし、このようなテクニカルなソロを弾くのも勿論、考えつくのも凄い。
こういうソロがあれば、聴き手の気分を喚起するのに充分だ。
しかし、AC/DCにしろ、AEROSMITHにしろ、こういうテクニカルで喚起するソロは皆無だ。
そういう曲では、喚起されないまま曲が終わってしまう。
しかし、こういうテクニカルなソロはファンを敬遠さしてしまう。
容易にはコピーして弾けないからだ。
やはり漫然とした手なりのソロの方がウケは良いし、大衆的な人気を得やすい。
しかし、そういうソロでは私は感心しない。
しかし、AC/DCはこれまでにシングル、アルバム合わせて2億枚を売ってきてHRアーティストとして世界2位、AEROSMITHは1億5000万枚を売り世界3位というのだから、私の評価軸とは全く逆なのは皮肉というほかないだろう。
●“♯Rabel”
↓
そういった速弾きソロを極力排除したNICKELBACKは96年という遅いデビューにもかかわらず、アルバム、シングル合わせて世界で5000万枚をこれまで売ってきた。
その代表曲の1つである“Burn It To The Ground”の出だしにそっくりなこのも思わずヘドバンをかましたくなる佳曲だ。
音楽性は往年とはかなり変わっているが、それでもギタリストとしてのアイデンティフィケーションは健在だ。
次のかつてのL.Aメタルを彷彿とさせる“Banshee”も,グルーヴ感がまたいい。
このバンドはギタリストがバリエーションのあるプレイをするし、シンガーも声域が広いゆえにいろんな曲が奏でられるのだ。 得意な曲が多いのだ。
しかるに、バラードもそのうちの1つだ。
●“Other Side Of The Rainbow”
↓
“Other Side Of Rainbow”も、かつての“More Than Words”にはない魅力を有したバラードだ。
黄金色の麦の畑の中で晴れの夕方の山の中で聴いているような気分にさせてくれるバラードなのだ。
次の“Small Town Beautiful”もバラードだ。
静けさを希求するファンには、このバラードの方がアピールできるだろう。
9曲目の“Hurricane”は、更に静けさを演出したバラードである。
更に静けさを追求したフォーク色満載のバラードだ。
PETER、PAUL & MARYの世界だ。
次の“The Mask”は、WARRANTの“Big Talk”を彷彿とさせるアップナンバーだ。
こういう躍動感のある曲は、アルバムには欠かせない。
やはりアーティストは何かしら外部から音の影響を受けて、それを内部に取り入れて、それを発酵させて、作曲という作業で輩出するのだ。
その“Big Talk”そのままのパクリではないが、内部発酵でいい味に変化している。
次の“Thicker Than Blood”は、その曲名通り、濃いギターとディストーションのコラボで、聴き耳がたち、聴き後の印象の残る曲になっているスローテンポではあるが。
中間部分のギターの御遊びタイムのようなソロは、観客を釘付けにすること間違いなし。
ライヴではやってほしい曲の候補にすぐさまなる。
その余韻を引きずった曲風である次の“Save Me”も、そんなことをすぐさま思ってしまう曲だ。
次の“X Out”はデジタリックなメタルの始まり方をし、それから無限な回廊が宇宙につながるようなアルペジオが続く全く不可測な曲になっている。
このバンドは、本当にいろんな音楽性を有したバンドだ。
あの『PORNOGRAFITTI』が傑作になったことで、次もこのアルバムのような出来になることを期待されていたが、そうはならず、いろいろ批判が出たのは承知だが、それでも結果的にいい曲に仕上がったのならば、それはそれでいいと思うのだ私は。
しかし、その内容の吟味を私のようにジジ臭く探索する人は少ないので、変わってしまったがゆえに即批判というふうになりがちなのはやはり残念なことだ。
私は、この“X Out”は佳曲と思うのだが世間一般はどう思うのだろうか?
次のアコ-スティックだけのミドルテンポの“Beautiful Girl”は牧歌的な雰囲気な曲だ。
この曲の手法はポール.マッカートニー由来だろうか?
これもまた佳曲ゆえに批判には当たらないが、世間はどうとらえるだろうか?
を論じるページが『BURRN!』でできそうだが、あの『PORNOGRAFITTI』当時ならばとにかく、今の無数にアーティストがいる時代にはかなり難しいことだろう。
次の“Here's To The Loser”もアコースティックを主体とした牧歌的なバラードだ。 憩いの場に転じるその妙がまたいい。
脳内がかなり癒される観がある。
これでアルバムが幕を閉じるのだから、有終の美を飾るに非常にふさわしい構成だ。
未だ人気が健在と思われる品位を有しているのが確認できたと思う。
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今回はこれにて終了します。
ありがとうございました。
♯EXTREME
♯SIX
♯2023年 来日公演