EUROPEの迷盤『PRISONERS IN PARADISE』は本当に迷盤か検証する!

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EUROPEPRISONERS IN PARADISEは、ある意味、迷盤だ。

このアルバムは、91年発表にもかかわらず、2015年WINGS OF TOMORROW完全再現の来日公演をしに来た時の会場であった川崎クラブチッタで販売されていたのだ。

今は、もうどのサイトでも廃盤になっているが、プラケースなしのOUT OF THIS WORLDとのカップリングで販売されているのみだ。

でも、人気が再燃したり、CD会社の気まぐれでいきなり再販されたりするので、そこは希望を持っていてほしいと思う。

こう書いている時点でも再販されている可能性もあるから、気になる人はチェックしていてほしいものだ。

これは、91年発表である。

あのOUT OF THIS WORLDの次に発表されたものだ。

そのOUT OF THIS WORLDは、あの世界15か国1位を獲得した“The Final Countdown”を収録したアルバムの次に出されたものだけあって、豪華なピクチャーレーベルになって当初は発売されたものだ。


out of this world
OUT OF THIS WORLD


あのアルバム発表後ゆえに、次のアルバム発表後は、そのアルバムほど売れなくても大きな観客動員数を出すものだ。

BON JOVIの最高売り上げのアルバムはSLIPPERY WHEN WETだが、その次のNEW JERSEYは,それほど売れなくても、SLIPPERY WHEN WETの時以上の観客動員数でツアーが組まれたものだ。

それと同じ現象がこのEUROPEでも起きた。

あのTHE FINAL COUNTDOWNの成功により、自分たちの好きなようにする裁量の幅が大きくなったゆえかどうかは知らないが、かなりキーボードがふんだんに使われて、大きな話題を呼んだのだ。

それに不満を持ったファンがいたゆえか、THE FINAL COUNTDOWN全米300万枚を売ったが、OUT OF THIS WORLD100万枚で止まってしまったのだ。

そんなに落ち込むほどかなと思える内容だったゆえに、私はこのアルバムを一度も中古盤屋に売ろうと思ったことはない。

英米ともにポップなミュージックがかなりのブームになっていたので、それに便乗するのが目的だったか、レコード会社の意向だったのかはわかりかねるが、かなりキーボード音を取り入れていた。

ハードロックを捨ててポップミュージックバンドになったとは言わないまでも、かなりポップなバンドという印象を与えていたのだ。

そのポップなブームの状況下ゆえに、ポップにのめりこんでいた音楽ファンが、あのアルバム収録の“Superstitious”や“Open Your Heart”のクリップをテレビで見た人や、あの曲をラジオでかかっていたのを聴いた人が、大勢飛びついて買ったのだろうと思う。

HRファンでない人をも巻き込んだ可能性が高い。

それがかない成功したゆえに、あのアルバム発表後の日本公演日程は、凄まじいものになったのだとしか言いようがない。

こういったブームに乗ることはセールを挙げる上では大事なことである。


europe.jpg
   EUROPE


しかし、評論家は黙ってはいない(笑)。

そういう音楽性に変化させたことを、商業化に走っただの、媚を売るようになったといったことを書きだすのだ。

しかし、資本主義の社会においては、商品が売れなくては誰もが生活を存続できないのだ。

ゆえに、流行を素早くチェックして、その音楽的要素を取り入れるということをするのは当然の成り行きなのだ。

当時の音楽的な要素を取り入れた結果、佳曲の多いアルバムに仕上がったのならば、それでいいと私は思うのだ。

しかし、大幅な音楽性のチェンジは必ず物議をかもすのが世の常なのだ。

それに屈してしまったせいなのか、91年発表のPRISONERS IN PARADISEは、キーボードをかなり抑えた出来にしたのだ。

3年ぶりの新作ということで、結構な話題になっていたが、それほどの売り上げを達したとはいえなかったし、評判も並レベルだった。

しかし、良かったのはあのMETALLICA』アルバムが大ヒット進行中で、売り上げを世界中でマグマのように噴出させていたMETALLICAヘッドライナーにした、日本でのイベントであるFINAL COUNTDOWNEUROPEも参加することになったのだ。

その他、参加したバンドはTHUDERTESLAだった。



FINAL COUNTDOWN』のパンフ


このイベントには、友人と7人でいってかなり興奮した思い出がある。

EUROPEは、そのFINAL COUNTDOWN』イベントに参加しただけで、その後の日本ツアーはなしで終わってしまった。

91年には、TESLA,EXTREME,MR.BIG、FIREHOUSEといったバンドがアコースティック調をメインとしたバラードをシングルカットしてヒットしたので、それにEUROPEも便乗しようとしたのかわからないが、シングル“I'll Cry For You”カップリングにアコースティックライヴを収録したミニアルバムを92年に出したが、それでもヒットにはつながらずに、アルバムもゴールド以上の売り上げに達することもなく終わってしまった。

しかし、駄作と思えるような出来のアルバムを1枚だけならともかく、2枚、3枚と出してしまうと、ファンは離れてしまう。

それはどの世でも常のことだ。

そういう駄作続きをしていても、ファンが離れないでいられるのは、1枚のアルバムだけでミリオンセール2回以上したアーティストだけである。

EUROPEは、そういうセールをしていなかったがゆえに、駄作を続けて出すわけにはいかなかったのだ。

やはり、売り上げが芳しくないアルバムを出してしまった後は、アルバムをリリースし続けて、良きモノを出す必要があるのだ。

しかし、このPRISONERS IN PARADISEリリース後に、ジョーイがソロアルバムを2枚出し、そのまま休止していたと思ったら、いつの間にか解散していたのだ。

活動休止や解散は、そのアーティストへのファンの心を大幅に離させるのだ。


 ジョーイ.テンペスト


駄作出しよりも、もっとたちが悪い。

このPRISONERS IN PARADISEリリース後、13年を経てオリジナルメンバーにて再結成が果たされた。

それまでも、このアルバムは入手可能だったから,それはそれで偉業だろうとは思うのだ。

私は、PRISONERS IN PARADISEがそれほどの卑下すべき内容とは思わなかったし、これまで一度も中古盤屋等に売ろうとは思わなかったのだ。

それを再考するに充分なアルバムと思っているのだ。


以下、その内容についてみてみたい。

最初は、EUROPEらしからぬ、手なりのギターリフで始まる“All Or Nothing”で始まる。

あまりに、平凡な曲ゆえに、ジョーイ.テンペストの声が出るまで、EUROPEとはわからぬほどだ。

曲自体は悪くはないが…。

次はEUROPEらしい溌溂とした、晴天の霹靂という言葉が似合うほど爽やかなアップテンポの“Half To Heaven”だ。

周知のように、このバンドはこのアルバムの後は、アルバムを作らずに解散した。

そして2004年に再結成するが、その際はこの時のギタリストであるキー.マルセロは参加せずに、古来からのギタリストであるジョン.ノーラムが戻った。

そのジョンが戻っても、このアルバムからはライヴでいくつか演奏されていた。

残念ながら、その選曲からこの曲は漏れてしまったが、今演ってほしい曲の1つでもある。


“I'll Cry For You”
  




次はシングルカットされた“I'll Cry For You”だ。

静かな畔から展開される伴奏の妙がまた素晴らしい!

こういうセンスの良さはジョーイ特有のモノなのは言うまでもない。


もっとポップさを前面に出せばもっとよかったと思うのだが、前作の失敗に懲りてしまったのだろうかと訝しげに思う。

キーの曲を活かすソロも申し分ない!

いつまでも、印象に残る名曲バラードだ。

そのセンスが活きているのが、2曲後のTalk To Me”になる。

出だしのコーラスのメロが、サビとして曲中で活かされていると感じるのは私だけだろうか?

これぞEUROPE!と言いたくなる瞬間が、この曲では何度も聴けるのだ。



次が、東京ドーム『FINAL COUNTDOWNでのライヴでドたまを飾った“Seventh Signだ。

この曲では、アメリカン.ハードロックバンドが調整しがちなレベルのドラミングにしてしまっているので、北欧メタルというカテゴライズから抜けてしまった観が、このアルバムから感じるのだ。

しかし、良い曲は良い曲と思う。

そういった出身国によるアイデンティフィケーションは必要なのか、不要なのか…実に悩むことだ。

音楽性の変遷を余儀なくされるのはどのバンドでも同様であり、音楽性が変わっても佳曲に仕上がったのならそれでいいと思うのだ。

しかし…。

因みに、この曲は2004年の再結成時に、ジョン不在時に作られた曲でも、演奏されていた。

そのアイデンティティがすくなくなりながらも、EUROPEらしさが感じれる名曲が次の“Prisoners In Paradise”だ。


“Prisoners In Paradise”
   





歌メロにも、ピアノのメロディにもこのバンドらしさが大いに感じれる憩いの雰囲気を持っている。

ギターソロもいいがエモーショナルに歌い上げるジョーイの声には感服だ。


感動せざるを得ない。

次もアイデンティフィケーションの感じれるミドルテンポの“Bad Blood”だ。

アメリカン.ハードロックの要素がこれまでのアルバムよりは多い気がするが、それは程度の問題であって、批判するほどではないだろう。

着実なドラミングも感じよいこの曲は。

キー.マルセロの音楽的なアプローチも好きだ。



  キー.マルセロ


そのキャリアを調べるとEASY ACTIONに属してしたようだ。

これほど良いものが作れるのならば、そのバンドでもどのような音楽をしていたのかと興味がわく。

調べたところ、このバンドはヴォーカリストも作詞を手掛けているゆえに興味がわく。

シンガーが作詞しないバンドは基本的に好きになれないのだ私は。

でも買いたいアルバムが大勢あるので、それがいつになるのかわかりかねるのだ(笑)

※参考記事

歌詞を書かないシンガー考察

eurokennes.blog60.fc2.com

 

そして、そんな坦懐を抱いているときに、更にその気持ちを高めてくれる癒しと憩いの雰囲気を有したのが次の“Homeland”だ。

これこそ、北欧生まれでないと作れないアイデンティファイされた曲だ。



次の“Got Your Mind In The Gutter”“Till My Heart Beats Down Your Door”はいたって平凡。

幽玄で煌びやかな雰囲気からゆったりとしたテンポで展開する曲が次の“Girl From Lebanon”だ。

この曲も、FINAL COUNTDOWNで演奏された。

躍動感のあるドラミングとそれに載せるギターリフとフレーズがいい感じだ。

一見して平凡そうに見えるが、グルーヴ感のある箇所が要所で登場するからいいのだ。

これにて、このアルバムは終わる。

日本盤のボーナストラックとして“Break Free”“Yesterdays News”が収められている。

しかし、この2曲は再結成後のライヴでも演奏されていたのだ。

日本以外の国は、どのアルバムに収録?と訝しがったのではないだろうか。

まあそれは不問にしておこう(笑)。

しかし、この2曲もいい出来だ。

グルーブ感のあるギターフレーズが特に!

先に書いたように、このアルバム発表後の日本公演は、FINAL COUNTDOWNだけで終わった。

92年には、PINK CREAM 69を前座にして、ヨーロッパを回ったようだ。

ファイル0064
 PINK CREAM 69

そのリポートもされていなかったので、ファンの私としては哀しかった。

そして、何故かアメリでは販売もされなかったがゆえに、チャートインもしなかったのだ。

そういう事態は、ファンの心を離す結果になってしまうのだが…。

しかし、いま音楽サイトでは、サイトによって入手可能だったり、不可能だったりする。

また他のいくつかのアルバムとのカップリングやセット販売で入手可能だったりといろんなバリエーションなのだ。

興味出た人は、詮索して、どのヴァリエーションで買うかを決めるのがいいだろうと思う。

このアルバムは心底勧めたいアルバムであることに違いはない。

(EUROPE FINAL COUNTDOWN』at 東京ドーム 12,31.1991 Set List)
Seventh Sign ※
Ninja
Scream Of Anger
Wings Of Tomorrow
Girl From Lebanon 

Prisoners In Paradise 

In The Future To Come
Guitar Solo
Superstitious
Break Free 

Yesterday’s News 

Rock The Night

(ENCORE)
Seven Doors Hotel
The Final Countdown


※=『PRISONERS IN PARADISE』からの曲


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●以下のサイトでも取り扱っています。
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※参考記事

NIGHT RANGEREUROPEの共通点とは?

eurokennes.blog60.fc2.com


今回はこれにて終了します。

ありがとうございました。

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♯『PRISONERS IN PARADISE』
♯ 91年