WHITESNAKEの“Ain't No Love In The Heart Of The City”の現代的な愉しみ方とは

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“Ain't No Love In The Heart Of The City”は、WHITESNAKEのコンサートでは必ず演奏されるナンバーだ。

この曲は、78年WHITESNAKEがデビューした年に、ミニアルバムであるSNAKEBITEに収録されている。

LOUD PARK 2016』の2日目に、DIZZY MIZZ LIZZYがサードビルとして参戦した時に、この曲がカバーされ、そのライヴリポートがBURRN!においてなされていて、「WHITESNAKEの曲である…」と書かれていたが、実際は違う。 これはアメリカのブルーズマンであるボビー.ブランドのカバーなのだ。


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   ボビー.ブランド


そのことを知ってネットでこの曲を調べるも、ボビーのオリジナルソングではなかったのだ。

マイケル.プライスとダン.ウォルシュなる人物のライティングだという。

この2人が果たしてライターなのかミュージシャンなのかの詳細は不明だ。

それについて調べている余裕はないようだ。

マイケル.プライスとダン.ウォルシュの作詞作曲ということは、デヴィッド.カヴァーデールは、コピーのコピーをしていたことになる。

この曲はWHITESNAKEのオリジナルではないにもかかわらず、毎回必ずライヴでは演奏されている。

78年ニューカッスル.シティ.ホールでのコンサートで、デヴィッドが目を閉じてこの曲を歌っていたという。


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デヴィッド.カヴァーデール


すると、観客が一緒になって歌ってくれていたという。

とても驚き、デヴィッドは歌うのをやめてそのまま立ち尽くして皆が最後まで歌うのを聴いていたという。

こんな経験はなかったという。

非常に貴重なエピソードだ。

私がWHITESNAKEのライヴに行ったのは90年武道館公演が最初だった。

この時のバンドは、すでにアメリカ化していて、曲も音も非常に現代的なモノに様変わりしていた。

そんな当時のバンドでさえも、初期のブルージーな曲をカバーしていたのだから驚きだ。

それほど重要なレパートリーなのだろうか。

その後、このバンドが来日公演をおこなったときには必ずコンサートに足を運んできたが、その時も必ずこの曲はしていた。

87年以降の、このバンドがゴージャス化してから以降は、アメリではこの曲は演奏されてはいなかった。


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  WHITESNAKE
87


アメリではあまりにブルージー過ぎてウケないと判断したからだろう。

それは、当時のブートレッグを観ればわかる。

しかし、2008年以降の若干ブルージーさを戻したこのバンドは、アメリでもこの曲をするようにはしているようだ。

WHITESNAKEの初期においては、“Day Tripper”といったTHE BEATLESのカバー等をしていたが、カバーを維持しているのはもう“Ain't No Love In The Heart Of The City”だけだ。


“Ain’t No Love In The Heart Of The City” SNAKEBITE収録
  


Snakebite


必須のレパートリーにはなってはいるものの、それほどノレない曲であることは告白しなければならない。

大の白蛇バカである自分であるが。

やはり音つくりにギャップがあると言わざるを得ないのだ。

BON JOVIRATTといった当時の現代的な音を体現していたバンドを好きになり、また当時の最新的な音に感動していた自分が、78年の昔に出たあまりにブルージーで暗めで、生々しい音をメインにしていた曲をそれほど好きはなれなかったのだ。

勿論嫌いではない。

メインとして好きにはなれなかったのだ。

BON JOVIRATTを初めてきいたのが88年。

WHITESNAKE“Ain't No Love In The Heart Of The City”が出たのが78年

たったの10年間でこれほどのギャップが感じるほど、当時の音楽技術の発展は目まぐるしく変遷していたのだ。

OZZY OSBOURNEジェイク.リーが中心になって89年BADLANDSが結成されて、自身の音楽的ルーツを前面に出したブルージーなハードロックを体現していたが、そのデビュー作は全米で40万枚を売っただけで終わった。

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私もこのデビュー作は、あまりにブルージーであまりノレずに終わり、中古盤屋に売ってしまった。

そして、JUGGED EDGE、NO SWEAT、THUNDER90年に続々デビューして、音楽界隈を賑わし、ブリティッシュロック復権を担うバンドとして注目されてはいたが、今こういったバンドの浮き上がりぶりはどの程度かは、問うまでもないだろう。

では、ブルーズをベースにした音楽はアメリでは、はやらないのだろうか?

AEROSMITHDEEP PURPLEはそういったバンドではあるが、これまでにこれらのバンドは、それぞれアルバムとシングル合わせて1億枚を売ってきた。

勿論、メイン市場はアメリだ。

そして、ブルーズメインの代名詞であるLED ZEPPELINにしろアルバムとシングル合わせて3億枚を売ってきた。

このバンドもメインの市場は、アメリだ。



    LED ZEPPELIN


こういう事実を踏まえると、ブルーズアメリでははやらないという事実はないようだ。

しかし、時代と条件が異なる。

AEROSMITHがデビューし、LED ZEPPELINが活躍した時代は、あの音が当時は最強だったわけだ。

しかし、人間の本質的な性で、その状態に満足せず、それ以上のヘヴィな音、それ以上のテクニックという働きが社会全体に働いてしまうのだ。

それゆえに、あれらのバンド以上のヘヴィさを追求するバンドが大勢出て、更にテクニカルになろうとするバンドがでてくるものなのだ。

ゆえにあれらの音楽は時代遅れになり、次の音楽がはやりだす。

そういった時代条件ゆえに、今、AEROSMITHLED ZEPPELINのような音楽を体現するバンドが出てもあまりはやることは難しい。


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      AEROSMITH


THE ANSWERRIVAL SONSといったバンドは、そういった音楽を体現するバンドであるが、あまりに隔世の観があるのは否めない。

やはり一度、ヘヴィな音楽になれてしまうと、それ以下のヘヴィさにには食指が向かわなくなってしまうのが必然なのだろうか。

90年代中盤からのヘヴィ.ラウドのブーム下、多くのハードロックバンドが苦戦を強いられることになったのだった。

しかし、AEROSMITHLED ZEPPELINといった、大いに売れた、いや売れすぎたバンドはそういった時代背景には関係なく、どのフェスにおいてもトリだし、売れ続けているのだ。

LED ZEPPELINは解散したが、このバンドの2人のメンバーが中心となったPAGE/PLANTは売れまくっているし、コンサートはどこもアリーナスタジアム級の会場だ。

“Ain't No Love In The Heart Of The City”に話しを戻すが、この曲がシングルカットされた70年代後半のライヴ.ヴァージョンを聴くも、やはりノレない。

あまりにギャップが大きい。

しかし、2004年にイギリスのハマースミス.アポロでおこなわれたライヴを収録したLIVE IN THE STILL OF THE NIGHTでも、“Ain't No Love In The Heart Of The City”は演奏されているが、このヴァージョンでは別格だ。


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LIVE IN THE STILL OF THE NIGHT


音も80年代以降のメタルファンの耳を惹くものに改良されているし、70年代後半ではされなかったギターの速弾きもソロで入っている。

これこそが私が望むスタンスだ。

現代的な音とテクニック、この2つがなければ好きにはなれないのだ。

いくら歌が上手く、曲が良くても。

初期のWHITESNAKEがどうしても、ファンになれなかったのは、そられが原因だったのだ。

しかし、その不満が取り除かれて、初期の曲である“Ready An' Willing”“Don't Break My Heart Again”や“Take Me With You”といった曲も現代的な音で演奏され、ソロも速弾きになっているので、必然的に興奮してしまう。

ベースとなる音楽自体は好きなのだから、こういった改良がなされれば、必然的にファンになるのだ。


LIVE IN THE STILL OF THE NIGHT収録ヴァージョン
  ↓




“Fool For Your Loving”80年READY AN' WILLING収録の名曲だが、どうもそのオリジナルヴァージョンには好意が持てないのだが、この曲がリメイクされてSLIP OF THE TONGUEに収録されたが、そちらのヴァージョンの方がどうしても聴いてしまうし、聴くだけで必然的に興奮してしまうのだ。

このリメイクヴァージョンにおいてティーヴ.ヴァイが活躍し、非常なゴージャスなソロを聴かせてくれるが、これを「過去の名曲を台無しにした」と評していたBURRN!の評者がいたが、とんでもないことで、名曲を更にランクアップさせた名手とすら言いたいほどだ。

BLACK SABBATHも同様に、初期のアルバムの曲は聴いていても、どうしても感動できない、古臭くて。

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しかし、98年にこのバンドはオリジナルメンバーで再結成がなされ、そのライヴがオフィシャル映像として発売された。

当然、現代的な音のアレンジがなされているがゆえに、私の食指に合うものに様変わりしていたから、歓待したものだ。

その音に、リフマスターであるトニー.アイオミのズシーンと重いリフが奏でられれば、感動するのは必然だ。

音が違うだけで、感動するかしないかが分かれるから音楽も奥が深い。

こういった世代ギャップもさることながら、好みのギャップも同年代でも存在するようだ。

最近、神奈川TVKAEROSMITHの特集が放映されていたが、どうもこのバンドは私は好きになれないのだ。

あまりにブルージーで、速弾きのギターソロなどない手なりのソロなのだ。

音楽自体が好みであれば、少しは聴いてもいいとは思うがそうでもないから、これは永遠に理解できそうもない。

このバンドのギタリストはジョー.ぺリーだが、GUNS N' ROSESスラッシュは、この人に影響を受けていたことは間違いないだろう。


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  ジョー.ペリー


そして憧憬の念を持っているのも確かだ。

スラッシュは、ジョーに似せてチリチリの頭をしているし、ギターもジョーと同じくほとんどレスポールを使っている。

そして、ジョーと同じくギターソロでは速弾きはほとんどしない手なりのソロだ。


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  スラッシュ


GUNS N' ROSESWelcome To The Jungleを初めて聴いて、出だしで「おっ!」と感嘆の声をあげたほどだった。

それくらいカッコよかったのだ。

しかし、あまり聴かずに疎遠なバンドになっていってしまったのだった。

それは、ソロを弾くのはほとんどがスラッシュだが、ギターソロに速弾きがないからだった。

これではだれも満足しないだろうと思いきやさにあらず、このバンドのデビュー作は驚異の全米1800万枚を売り、これまでのシングルとアルバムの両方の全世界での売り上げは1億枚を超えているのだ。

やはり同じ世代でも好みのギャップがあるのだ。

しかし、そういう並と自分が思うギタリストであるジョー.ペリーだが、かつて元RATTのスティーヴン.パーシーが決成したARCADEにセカンドギタリストであったフランキー.ウィルセックスがいたが、この人もジョー.ペリーがフェイバリットなギタリストだったらしく、この人のARCADEでもプレイは、手なりのソロだったし、コスチュームもジョーに似せていたものを着ていたのだ。


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左がフランキー.ウィルセックス


それくらい憧れを醸成さすことのできるギタリストであるようだ。

ただ、AEROSMITHがウケたのは、デビュー当初の音楽性を維持しつつも、現代において聴いても古臭さがまるで感じないプロデュースを音に施しているのが、最近のTVKを観てわかったのだ。

そういった努力は忘れてはいないことは確かなようだ。

そういった面に加え、速弾きのソロがない、ゆえに誰もがコピーを容易にすることができて、多くの人がアーティストとの親近感が感じれて、アルバムやシングルのセールスや観客動員に貢献してきたということが言えるだろう。

やはり、私が好むようなテクニカルなプレイは、ファンを遠ざけるということのようだ。

しかし、自分のスタンスをやめようとは思わないのだ。

ヘヴィでゴージャスな速弾きソロが聴けて、それでいて音が現代的…こういうバンドこそが心底ファンになれるということだ。

そのことに同意する人に薦めたいのがWHITESNAKEのライヴ映像であるLIVE IN THE STILL OF THE NIGHTだ。


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今回はこれにて終了します。

ありがとうございました。

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⇒『WHITESNAKEの大変異』=『WHITESNAKE 87’』アルバム

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