(コラム)SLAYERの復活を微妙な感懐で見守り、このバンドの今後に何を望むか?『REIGN IN BLOOD』を懐古する。

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あのSLAYERが引退状態から戻ってきた。

LOUDER THAN LIFERIOT FESTIVALというフェスでのトリでの出演が決まっているようだ。





2019年の日本でのDOWNLOAD FESTIVALを最後に引退を表明し、そのライヴの模様もBURRN!の巻頭特集でリポートされていたのを、私は鮮明に覚えているし、その号も所有して、レンタル倉庫にしまってある。

その時の雑誌に携わる人たちの慈しみの念を払拭してカムバックしてきたSLAYERのメンバーに対して、すんなりウェルカムと言えるだろうか?

これは例えば、「これにてこの会社を辞めます。皆さん、これまで誠にありがとうございました!」と涙ながらに頭を下げて辞していくゆえに,他のものたちが壮大な壮行会を開いたにもかかわらず、2週間で戻ってきた人みたいだ(笑)。

そういうことを言ったら、SLAYERのメンバーの方も、そんな壮行会を開いてくれと懇願したわけではない、と反論するだろうが、あの引退のライヴの報道の時の『BURRN!』の編集員たちの情熱は並々ならぬものを感じたし、今でも覚えている。

それを抑えて引退宣言撤回…自分でもよくわからない感情が胸内にくすんでいる。

しかし、ファンにとってはかなりの嬉しい事態だろう、引退宣言の撤回は。


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   SLAYER


あの引退宣言からわずか5年でカムバックしてきたのは、やはりメンバーたちは暇だからだろう。

引退宣言して、すぐさまカムバックする例はSLAYERの他にも多くある。

SCORPIONSWHITESNAKEOZZY OSBOURNE,KISS…といとまがない。

先のコロナ騒動でもわかったのは、これまで一生懸命働いてきたかどうかにかかわらず、やはり家に居続けるのは気持ちが悪くなって体を動かしたくなるのだ。

私は自粛が3日でダメになった。

ゆえに、SLAYERがカムバックした時の気持ちはやっぱりねえ、ということで分かるのだった。

しかし、LOUD PARKの常連だったSLAYER日本では歓待を受けているということだ。

そんなSLAYERはまた日本に来るのは自然な成り行きだ。

しかし、LOUD PARKは昨年だけのカムバック企画と言っていたし、DOWNLOAD FESTIVALも再度の開催の目途がついていない。

そうなれば、当然単独公演になってしまうが、どの会場でするのだろうか?

90年の初頭からSLAYERは、単独公演をおこなってきたが、その際もいずれも2000人前後中級ホールばかりであった。

しかし、LOUD PARKといったアリーナでのフェスでは、そういったラウドなバンドを集めたフェスということもあり、トリにはやはり、その大御所であるSLAYERMEGADETHJUDAS PRIESTHEAVEN AND HELLなどが抜擢された。

しかし、中級ホールばかりでしていたSLAYERが今、どの規模でできるのだろうか興味津々なのだ。

単独公演では中級ホールだけど10000人以上のキャパでのフェスではトリ…何か奇妙な感じを覚えるのは私だけであろうか?

BIG4の一角であるMEGADETHは、93年の昔に日本武道館での単独公演を敢行しようとしたが、シンガーのデイヴのドラッグ所持が発覚して、急遽取りやめになり、その後、アルバム発表と来日を重ねるも、ついぞ日本武道館公演は実現しなかったが、2023年についに30年の歳月を経て再度実現した。

また同年代から活躍してきたHELLOWEEN(下写真)も中級ホールでの公演を維持したが、武道館公演とは無縁だった。

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しかし、昨年ついに日本武道館公演を実現させた。

HELLOWEENLOUD PARKの常連だったが、セカンドビルだった。

SLAYERがトリの時も、HELLOWEENセカンドビルだった。 SLAYERLOUD PARKトリになること5回

ならば、セカンドビルだったHELLOWEEN日本武道館公演を実現させたのならばSLAYERもできるだろう、と考えがちであるが、実際はそううまくいかないだろう(笑)。

あのLOUD PARKという名称からして、ヘヴィでラウドな音楽を体現するバンドばかりが参戦するフェスゆえに、その最先端のバンドであるSLAYERトリ5回も抜擢されたのだ。

しかし、その事実と売り上げ実績は別物なようだ。

どんな大御所であろうと、効果逓減の法則は働いてしまうゆえに、アリーナでの単独公演は難しいし、LOUD PARKではトリにななれなかったけれども、単独公演でのキャパは、SLAYERのそれよりもHELLOWEENのそれの方が上回っていたのは事実だ。

この事実は、私でもわかったにもかかわらずなのに何故、SLAYERばかりがトリになれて、HELLOWEENはなれなかったか?

やはり、そのフェスの趣旨にSLAYERの方が合っていたということもさることながら、そのフェスの主催者に気に入られているアーティストだったということだろう。

昨年のLOUD PARKにおいては、KREATORセカンドビルになった。



しかし、このバンドはどう考えても、最初~中盤くらいに登場するくらいのCDの売り上げ実績しか挙げれていないにもかかわらず、この地位になっていた。

売り上げ実績ではサードビルのNIGHTWISHの方が上なのに、KREATORの方が後方で登場して演奏…その時、前に演奏したNIGHTWISHの壮大さの余韻に圧倒されて、しらけムードが漂っていたと思ったのは私だけだったろうか?

そういう考察が好きな私であるが(笑)、HELLOWEENの方が、実際はCDは売れていただろう。

ゆえに、SLAYER日本武道館公演は難しい。

しかし、もしそれがかなったとしたら私はその公演に行くだろう。

ヘヴィメタルにのめり込むきっかけはいろんなバンドから与えられたが、その1つはSLAYERであることは間違いないのだから。

トリで出演した時の最後のイベントはLOUD PARK 17』だった。

この時も彼らの雄姿を観たが、そのステージの時が出演者中、一番歓声が大きかったのは間違いない。

しかし、それほど自分はのれなかったのだ、ある原因があって。

それから2年後に日本初のDOWNLOAD FESTIVAL(下写真)が開かれて、それにセカンドビルとしてSLAYERは出演した。



やはり、この時も歓声は凄まじかった。

しかし、この時の出演したバンドの顔ぶれもすさまじかった。

JUDAS PRIESTSLAYERARCH ENEMYLOUD PARKヘッドライナーを務めたバンドが3つも参戦していたのだ。

それに、AMARANTHEHALESTORMANTHRAXといったLOUD PARKの常連まで参戦したのだ。

こんな豪華な顔ぶれがあるかと思わず拳を握りしめて笑ったものだ。

しかし、肝心のトリセカンドビルが良いステージを見せてくれなければ、尻切れトンボの謗りを免れない、どんな顔ぶれが良くても。 今、思い起してみれば若干その雰囲気になってしまったことは確かだった。

トリJUDAS PRIESTは単独公演から1年もせずに帰ってきたということもあり、セットリストを大幅に変えなければならなかった、飽きられないように。

それがあだになり、初期のマイナーなナンバーを多く持ってくることにより、しらけムードが漂っていたのは否めなかった。

そして、SLAYERだが、最後ということもあり、誰もが贔屓目で注目しただろう。

そういうことはやはり、少しの助けにしかならない。

ただし熱烈なファンはこの限りではない。

私はこのバンドのREIGN IN BLOOD(下写真)に耽溺したのだ、かなりの程度。

REIGN IN BLOOD

かなりヘヴィでスピーディまっしぐら。 そのビートのすさまじさと潔さが何とも言えない気持ちよさを醸し出し、1日に何度も聴いてしまうほどだったのだ。

「こんな凄いアルバムがあるならば、他のもいっぱいいいアルバムがあるだろうし、これからも出すだろう!」と期待して、それ以前のアルバムや、それ以降のアルバムを買って聴くも、気怠さが目立つアルバムという印象は拭えなかった。

その他のアルバムは、どれも2~3曲だけ佳曲があるだけなので、アルバム通して聴くのは困難になり、いずれも中古盤屋に売ってしまったのだ。

しかし、不思議なのは、そのREIGN IN BLOODが最高の売り上げを達したアルバムではなかったのだ。

そのアルバムから94年DEVINE INTERVENTIONまでの4作連続ゴールドディスクを獲得したのがSLAYERの売り上げ実績なのだ。

これには驚いた。

あのREIGN IN BLOODが、私のみならメタル雑誌で良い評価を喧伝していたゆえに、これが他のアルバムの売り上げを凌駕していたのかと思いきやそうではなかったのだ。

まあ、そう言った雑誌などでの評価がそのまま世間での売り上げに到達するわけではないのは百も承知であるが…。

しかし、そういうこのバンドの最高傑作というニュアンスはバンド側も認めており、それだからこそあのアルバムの完全再現ライヴを演り、それがオフィシャル映像にもなったのだった。

それがSTILL REIGNING(下写真)だ。

still reigning

完全再現は2000年あたりからブームになり、いろんなメタルバンドがおこなっていた。

JUDAS PRIESTも、あのBRITISH STEEL完全再現LOUD PARK 2009』でやった。 開催前に、JUDAS PRIESTから、あのアルバムの完全再現をすると告知があったゆえに、SLAYERREIGN IN BLOOD完全再現を!と期待が高まったが、結局普通のライヴ模様に落ち着いたようだ。

そして、最後のステージと告知されたDOWNLOAD JAPANでも、最高傑作のREIGN IN BLOOD完全再現をしてほしかったが、ライヴの途中であのアルバムの収録曲の1つをはじめの方で演奏されたので、「ああ結局なしか…」と途方に暮れたのだ。

やはり、どうしてもあのアルバムに拘ってしまうのだ私は。


●“Angel Of Death
  ↓



怒号のギターとバスドラ、スネアのアンサンブルで幕は落とされる その和音が腹の底まで響き渡り、気持ちいいことこの上ない!

そこに、地獄の果てまで届くトム.アラヤのロングシャウトで畳み掛ける。

最後は、怒涛の高音ツインギターバトルで幕を閉じる。

このアルバムはどれも速い曲ばかりである。

スローな曲など1つもない。

そして、どれも劇的変化を特徴として持っており、その変化は先が読めない奇想天外さがあり、先が安易に読めない! いきなりギターのソロ、とか、ギターとドラムの掛け合いになったりと。

その、どれもが、音がそつがなく、体にしみこみ気持ち良い!

satugaisya

瞠目すべきは“Raining Blood”に代表されるような、ホラー映画のごとき壮大さや劇的さである!

特に“ Postmortem”~“Raining Blood”への繋ぎ時のドラマティックさである!


火山か堤防の決壊時のような凄まじいSE音の後に、躍動感あるドラムビートにつながり、勢いあるアップテンポに突入する。

そして、最後は数えきれないほどの、ドラムリフとギターの超高音バトルの掛け合い、ぶつけ合いでアルバムは幕を閉じる。

その凄まじさといったら言葉では表現しきれない!

とにかく、言葉を失う!

感動的なことこの上ない!


ではその超名曲を堪能いただきたい!


●“Raining Blood
  ↓




私が驚いたのは、このアルバムが、全体的に、起承転結の様相を呈しているのがわかった瞬間である。

このアルバムは、先にも書いたが、速い曲で占められており、しかも全曲で30分にも満たないのである。

それくらいソリッドなアルバムなのである。

それくらいソリッドなアルバムでありながら、劇的な変化を擁し、ドラマティックさをもちながら、しかも感動的である!

アルバム作りにおいて、スラッシュメタル、いやへヴィメタルにおいてもこれほどの手腕を持つバンドはSLAYERの他にいないであろう、などと初めて聴いたときには思ったものだ。


とにかく感動的である、このアルバムは!

REIGN IN BLOOD収録曲
1. Angel Of Death
2. Piece By Piece
3. Necrophobic
4. Altar Of Sacrifice
5. Jesus Saves
6. Criminally Insane
7. Reborn
8. Epidemic
9. Postmortem
10. Raining Blood

これまで、このアルバム収録の曲をいくつか断片的に曲名でも、実際の曲をきいたことがある人もいるかもしれないので要チェックだ。

やはり、あの、私がヘヴィメタルにのめり込むきっかけを作ってくれたREIGN IN BLOODにこそ、意識がクローズアップしてしまうのだ。

それの完全再現をしてくれるかどうか?

日本武道館でできるかどうか
が、私が一番気がかりな点ではあるが、彼らの来日公演が決まったら行きたいとは思う、どの規模ではあろうとも。

しかし、メジャーなバンドほどいまはチケット代が高くなっているのだ。

来月に、ANAAL NATHRAKHSAMAELのドッキングライヴが決まっているが、二者で9000円という格安であるが、今やMETALLICABON JOVIのライヴは最安席でも16000円前後する。

これでは、値段を聞いただけで行く気が萎えてしまう(笑)。

これほどではないが、メジャーというだけで、これに準ずる値段設定にならないことをひたすら願うばかりだ。

何はともあれ、SLAYER来日公演が決定したら、その際には行きたいとは思っている。

ここまでの文を読んで、あのREIGN IN BLOODに興味を持った人には、かなりのおすすめである。

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今回はこれにて終了します。

ありがとうございました。

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